カニの特徴と体のしくみをわかりやすく解説

知って納得!カニの特徴と体のしくみ

最終更新日:2025-12-28

海や川、岸辺で見かけるカニの特徴は、甲羅やハサミだけでは語り尽くせません。体の構造、横歩きの理由、鰓での呼吸、脱皮による成長までを整理し、種類を問わず共通する基本をわかりやすく解説します。

目次

カニの体の構造:頭胸部・腹部・外骨格の特徴

頭胸部(頭と胸が融合した構造)とは

多くのカニは体の大部分が「頭胸部」で占められ、背面は硬い頭胸甲に覆われています。甲羅は外敵から内臓を守る盾であり、筋肉の付着基盤としても機能します(参考:カニ)。

短く折り畳まれた腹部の位置と役割

腹部は短く退化し、通常は胸部の裏側に折り畳まれて隠れます。これにより重心が安定し、甲羅の下で生殖構造や抱卵スペースを確保できる合理的な形態と言えるでしょう(参考:Wikipedia「カニ」)。

外骨格(頭胸甲)の素材と機能

外骨格は主にキチン質とカルシウムから成り、物理的な防御に加えて、体内の水分保持や筋力伝達のための硬い支点として働きます。甲羅の形や厚みは種によって異なり、生息環境への適応が反映されます(参考:Wikipedia「カニ」)。

脚の配列とハサミの構造:5対の胸脚と各脚の役割

5対の胸脚とは何か

カニは典型的に5対の胸脚を持ち、前から順に第一脚〜第五脚と呼ばれます。第一脚は特殊化し、強力なハサミ(鉗脚)となり、残りの脚は歩行脚が基本です。

第一脚(鉗脚=ハサミ)の形態と機能

ハサミの形状や大きさは種や性別で大きく異なり、採餌、配偶行動、縄張り争い、防御などで使い分けられます。雄で顕著に大型化する例も多く、性選択の結果と考えられます(参考:鹿児島大学総合研究博物館ニュースレター)。

残りの歩脚の役割

第二〜第五脚は歩行に最適化され、基質をしっかり捉え素早く体を運びます。砂地や岩場、泥底など生息環境に応じて先端の形や剛性が異なるのが特徴です。

なぜカニは横に歩くのか:関節構造と効率的な動き

脚関節の向きと可動域が横歩きを促す理由

カニの脚は体の側方に張り出して配置され、関節の屈伸軸も左右方向への推進に適しています。前進より横方向へ力を出しやすい構造が、結果として俊敏な横歩きを生み出します。

横歩きの生態的メリット(素早い横方向移動など)

横移動は体幅の広い甲羅を活かして姿勢を安定させ、狭い隙間や岩陰への素早い退避を可能にします。視野や触角の使い方とも相性がよく、外敵回避や採餌の効率向上に寄与すると考えられます。

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鰓(エラ)で呼吸する仕組み:水分が必要な理由と陸上適応

鰓の位置と構造(頭胸甲の両側)

カニの鰓は頭胸甲の左右にある鰓室内に収まり、薄い鰓葉で酸素と二酸化炭素を交換します。鰓室は甲羅に守られ、泥や砂からの物理的ダメージを受けにくい構造です。

鰓呼吸に必要な環境(水分や流れる水)

ガス交換には鰓の湿り気と水の動きが重要で、乾燥すると機能が低下します。潮間帯の種は自ら水を循環させたり、波打ち際の水流を利用したりする工夫が見られます。

陸上で呼吸する種の適応例

サワガニやアカテガニなど半陸生の種は、鰓室を湿らせ続けるしくみや鰓室内の壁面の血管化を進めるなどして、空気中でも効率を保つ適応が示されています。

よくある質問(FAQ)

Q. カニとエビの違いは何ですか?
A. カニは頭胸部が幅広く腹部が短く折り畳まれるのに対し、エビは細長い体で腹部が発達し、泳ぐ脚もうまく使います。歩行主体か遊泳主体かの違いが体形にも表れます。

Q. カニはどうやって大きくなるのですか?
A. 硬い外骨格を脱ぎ捨てる「脱皮」で成長します。脱皮後は柔らかいうちに体を膨らませ、新しい甲羅が硬化すると一回り大きくなります。

Q. カニは泳げますか?
A. 多くは歩行主体ですが、ガザミ類のように後脚が櫂状に変化し泳ぎが得意な種もいます。岩礁性のカニは短距離の水中移動が中心です。

Q. カニのハサミは何に使いますか?
A. 採餌、殻や餌の破砕、巣穴の整備、求愛や威嚇、防御など多用途です。種や性別で形や使い方が大きく異なります。

Q. カニの呼吸はどうしていますか?
A. 頭胸甲の両側にある鰓で酸素を取り込む鰓呼吸です。陸上性の種も鰓を湿らせることで機能を維持しています。

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脱皮で大きくなる仕組み:外骨格とホルモン制御

外骨格があると成長に脱皮が必要になる理由

外骨格は伸縮しないため、成長には周期的に古い殻を脱ぐ必要があります。脱皮直後は軟らかい新生殻に水分を取り込んで体積を拡大し、その後に硬化が進みサイズが固定されます。

脱皮の一般的なサイクルとホルモン制御

脱皮は、眼柄の脱皮抑制ホルモンと、Y器官から分泌されるエクジステロイドのバランスで制御されます。環境条件や栄養状態がサイクルに影響し、種や成長段階で間隔が変わります(参考:国土交通省 国総研)。

脱皮後の脆弱期と生存上の注意点

硬化が完了するまでの数時間〜数日は外敵に非常に弱く、巣穴や陰に隠れて過ごします。飼育や取り扱い時はこの期間のストレスと乾燥を避けることが重要です。

何を食べるのか:カニの雑食性と餌の取り方

雑食性とは:植物性・動物性の両方を食べる習性

多くのカニは雑食性で、藻類、落葉、デトリタス、小型貝類、死骸など多様な資源を利用します。環境の変動に強い食性が、岸辺生態系での成功につながっています。

採餌方法(ハサミで捕らえる・口で粉砕する)

ハサミで餌をつかみ、顎脚や大顎・小顎で細かく砕いて口へ運びます。硬い殻はハサミの剪断力で割り、中身を効率よく摂取します。

生息環境による食性の違い

干潟ではデトリタス中心、岩礁では付着藻類や二枚貝、河川では落下昆虫や腐食物など、場に応じた柔軟なメニューが見られます。

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触角と口の役割:感覚器としての触角と餌の加工のしくみ

触角で何を感じ取るか(化学・触覚)

カニは短い第一触角と長い第二触角を持ち、匂い物質や水流、振動を敏感に捉えます。餌の所在や外敵接近、同種とのコミュニケーション情報に役立ちます。

口器の構造と餌の粉砕・摂取プロセス

口の周りには大顎・小顎・顎脚が並び、ハサミで運ばれた餌を受け取り、刻み、唾液と混ぜて咀嚼を完了します。連携の良さが硬い餌の利用幅を広げます。

ハサミと口の連携(餌の捕獲から処理まで)

ハサミが大きく粗い作業、口器群が細かい仕上げを受け持つ分業で、効率よく栄養を取り込みます。片方のハサミが器用さ、もう片方が力を担う種もあります。

オスとメスの見分け方と繁殖行動の違い

外見で分かる性差のポイント(腹部の形など)

腹部の形は判別の最重要ポイントで、雄は三角形で細く、雌は幅広く扇形です。雌の広い腹部は受精卵を抱えるのに適しています。

ハサミや体格の性差とその機能

多くの種で雄のハサミが大型化し、威嚇や争い、求愛ディスプレイに使われます。雌は抱卵や摂餌の効率を優先した形態が目立ちます。

繁殖期の行動や役割の違い

繁殖期には雄が雌をガードしたり、雌の脱皮直後に交尾が行われる例が知られます。受精後、雌は腹部に卵を抱え、孵化まで保護します。

カニの特徴を見分ける手順/方法

  • 甲羅の形と幅: 丸型か四角型か、トゲや溝の有無を確認します。
  • 腹部の形: 裏返して雄(三角)か雌(扇形)かを見ます。
  • 第一脚(ハサミ): 左右差の有無やサイズで種や性差の手がかりを得ます。
  • 歩脚の形: 先端が櫂状なら遊泳性、鋭ければ岩場適応が示唆されます。
  • 生息場所と行動: 干潟・岩礁・河川などの環境と、昼夜の活動性を合わせて判断します。

観察時の注意点/ポイント

  • 干からび防止のため、長時間空気中に晒さないよう配慮しましょう。
  • 脱皮個体は特に脆弱です。持ち上げず、そっと観察するのが安全です。
  • 自然の個体は採集・持ち帰りの可否を自治体のルールで確認してください。

まとめ

カニの特徴は、頭胸甲に守られた体、5対の脚と大型のハサミ、横歩きを生む関節配置、鰓呼吸、そして脱皮成長という一連のしくみに集約されます。腹部の形やハサミのサイズなどの見分けポイントを押さえれば、種類判別や生態の理解が進むでしょう。

筆者プロフィール(E-E-A-T)

カニ通販専門メディア「kani-tu.com」編集兼バイヤー。産地の漁港取材と活ガニの取り扱い経験が豊富で、甲羅硬度や脱皮周期を販売品質に反映してきました。学術資料と現場知見を突き合わせ、実用的で正確な情報発信に努めています。

参考