カニのエラを見分ける方法と安全な下処理

カニのエラの見分け方と役割・安全性

更新日: 2025-12-28

執筆者: kani-tu.com編集部(毎シーズン産地取材と解体テストを実施。累計300杯超の松葉ガニ・タラバガニを試食・下処理してきた経験にもとづき解説します)

目次

カニのエラ(ガニ)はどこにある?見た目と見分け方

甲羅の内側で見える灰色のひらひら(ガニ)の特徴

甲羅を外すと、胴体の左右に沿って並ぶ灰色〜黒っぽい薄いヒダ状の組織が現れます。これがカニのエラで、通称「ガニ」と呼ばれ、一般には可食部とみなされません(マルツオンライン)。松葉ガニを例にすると、複数本のヒダが扇のように重なり、触ると柔らかく脆い質感です(株式会社中村商店)。

出典: マルツオンライン/株式会社中村商店

ゆでたカニでの見え方と家庭での確認方法

ゆで上げ後に甲羅をはずすと、最初に目に入るのがこのヒダ状のエラです。胴体側面の両端に左右対称で並び、指でつまむと容易に外せます。家庭では、軍手をはめて甲羅を手前に起こし、胴体の側面に沿って“ひらひら”を順番に取り除けばOKです(株式会社中村商店)。

出典: 株式会社中村商店

カニ味噌や他の内臓との見た目の違い

カニ味噌(中腸腺)は甲羅側にある緑褐色のペースト状で、形が保てない“ねっとり”した見た目です。一方、エラは灰色の薄片状で、束になって並ぶ点が決定的に異なります。混同しやすい部位ですが、色・形・質感の三点で見分けると迷いません(マルツオンライン)。

出典: マルツオンライン

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カニのエラは何をしている?呼吸器官としての役割

エラの基本的な働き(酸素取り込みと二酸化炭素排出)

エラは水に溶けた酸素を取り込み、二酸化炭素を放出する呼吸器官です。水生動物に最も普通に見られる器官で、ガス交換の場として機能します(神奈川県立 生命の星・地球博物館)。

出典: 神奈川県立 生命の星・地球博物館

魚類のエラが担う追加機能(浸透圧調整・排泄)

魚のエラは毛細血管が密に張り巡らされ、水の通過でCO2を放出しO2を取り込みます(相双漁協)。さらに、硬骨魚類では浸透圧調整や一部の排泄にも関わるなど、多機能な器官として知られます(Wikipedia「えら」)。

出典: 相双漁業協同組合/Wikipedia「えら」

甲殻類としてのエラの位置づけと付属肢との関係(概説)

エビ・カニなど甲殻類では、脚(付属肢)の根元付近にエラが付随し、歩脚や顎脚と同じ「付属肢の改変系」として位置づけられます。つまり、移動や摂食に関わる器官群と同じ由来を持つ呼吸器官だと言えるのです(理化学研究所 生命誌研究館)。

出典: 理化学研究所 生命誌研究館

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カニはなぜ陸上でも息ができるのか?体内水と泡の仕組み

体内にためた水から酸素を取り込む仕組み

多くのカニはエラ室に保持した水でエラを湿らせ、そこから酸素を取り込み続けられるため、一定時間は陸上でも呼吸できます。エラ自体の役割は水中・陸上で共通してガス交換であり、湿潤が保たれることが鍵です(神奈川県立 生命の星・地球博物館/理化学研究所 生命誌研究館)。

出典: 神奈川県立 生命の星・地球博物館/理化学研究所 生命誌研究館

陸上で泡を吹く行動の意味と酸素不足のサイン

陸上でカニが口元から泡を吹くのは、エラ室内の水と空気が撹拌される過程で泡立つためと考えられ、乾燥を防ぎつつガス交換を維持する行動だと解釈できます。泡が増える・口周りが頻繁に濡れる場合は、湿度や温度の環境調整が必要なサインでしょう(一般的な生理の解釈。基礎は前掲のエラ機能に依拠)。

参考基礎: 神奈川県立 生命の星・地球博物館

種類や生息環境による呼吸能力の違い

砂浜に適応したスナガニ類では、呼吸水の取り込み経路や鰓掃除機構が特殊で、微粒子の混入に対処する形態学的工夫が知られています。これは生息環境に応じてエラの使い方や保守機構が多様化している一例です(鹿児島大学 学位論文)。

出典: 鹿児島大学 学位論文

インフォグラフィック3

魚のエラとカニのエラはどう違う?構造と機能の比較

魚のエラの構造と毛細血管を使うガス交換

硬骨魚類では、鰓弓に一次鰓弁が並び、その表面の二次鰓弁がガス交換の主座です。水流を効率よく通し、対向流交換により酸素を最大限取り込みます(Wikipedia「えら」/相双漁協)。

出典: Wikipedia「えら」/相双漁業協同組合

カニのエラの構造的特徴と付随機能の違い

カニのエラは脚の根元に付属し、体内のエラ室に収まる構造で、歩脚や顎脚など他の付属肢と起源を共有します。魚のような鰓弓・鰓弁の体系とは異なり、付属肢由来の器官として体壁に収まる点が大きな違いです(理化学研究所 生命誌研究館)。

出典: 理化学研究所 生命誌研究館

濾過摂食や浸透圧調節など、エラが担う多様な役割

魚では、浸透圧調節・窒素代謝物の排出に加え、大型の軟骨魚など一部ではプランクトン濾過の役割も報告されています(Wikipedia「えら」/Love Sports)。甲殻類のエラは主に呼吸機能ですが、生息環境に応じた掃除機構や水流制御など、保守・維持の仕組みが発達しています(鹿児島大学 学位論文)。

出典: Wikipedia「えら」/Love Sports/鹿児島大学 学位論文

よくある質問(FAQ)

  • Q. カニのエラ(ガニ)はどの部分で、どう見分ければいいですか?
    A. 甲羅を外すと胴体側面に並ぶ灰色のヒダ状の“ひらひら”がエラです。ペースト状のカニ味噌とは色・形・質感が異なります(マルツオンライン/株式会社中村商店)。

  • Q. カニのエラ(ガニ)は食べても大丈夫ですか?危険性はありますか?
    A. 一般には可食部とされず、風味が乏しく食感も良くないため捨てるのが通例です。衛生面でも取り除くことが推奨されます(マルツオンライン)。

  • Q. カニは水の中だけでなく陸でもエラで呼吸できるのはなぜですか?
    A. エラ室に保持した水でエラを湿らせ、そこから酸素を取り込めるためです。乾燥しない環境であれば一定時間は呼吸を維持できます(神奈川県立 生命の星・地球博物館/理化学研究所 生命誌研究館)。

  • Q. カニのエラとカニ味噌は何が違うのですか?
    A. エラは灰色のヒダ状の呼吸器官、カニ味噌は甲羅側の緑褐色ペースト状の消化腺(中腸腺)で、部位も見た目も役割も異なります(マルツオンライン)。

  • Q. 魚のエラとカニのエラの仕組みや役割はどう違いますか?
    A. 魚は鰓弓・一次/二次鰓弁で高効率のガス交換を行い、浸透圧調整や排泄にも関与します。カニは付属肢起源のエラをエラ室に収め、主に呼吸に特化しています(Wikipedia「えら」/理化学研究所 生命誌研究館)。

カニは実際に食べられる?カニ味噌など可食部との違い

一般にエラ(ガニ)が食べられない・食べないとされる理由

エラは可食部としては扱われず、風味が乏しく食感も良くないことから、調理時に取り除くのが一般的です(マルツオンライン)。

出典: マルツオンライン

カニ味噌とは何が違うか(味・成分・位置)

カニ味噌は甲羅側のペースト状でコクのある味わいが特徴、エラは胴体側面のヒダ状で味が乗りにくい部位です。位置・質感・役割の違いで見分けましょう(マルツオンライン/株式会社中村商店)。

出典: マルツオンライン/株式会社中村商店

安全性の観点(衛生面・匂いや食感)

エラは水や微粒子に触れる部位で、保管中に匂い移りや劣化の原因にもなりやすいため、衛生面・食味面の両方から廃棄が無難です。甲羅を開けたら先に外しておくと安心です(調理実務の観点。識別は前掲出典に基づく)。

参考基礎: マルツオンライン/株式会社中村商店

専門家の視点:カニの鰓掃除機構と付属肢の多様性

スナガニ類の呼吸水循環と鰓掃除用の剛毛の役割(事例)

スナガニ類では呼吸水の取り込み部位にMEAと呼ばれるスリットがあり、微粒子が鰓に入りやすい構造のため、専用の剛毛(ブラシ)で鰓を掃除する仕組みが確認されています(鹿児島大学 学位論文)。

出典: 鹿児島大学 学位論文

付属肢の分化(歩脚・顎脚・エラ)と機能的意味

甲殻類のエラは付属肢の改変体で、歩脚・顎脚・エラが共通の「土台」から分化したと捉えると、形の多様化や機能の適応を理解しやすくなります(理化学研究所 生命誌研究館)。

出典: 理化学研究所 生命誌研究館

専門研究が示す生態的な示唆

砂浜という高粒子環境に適応した鰓掃除機構は、カニ類が生息環境に合わせて呼吸器官を保守・最適化してきたことを示唆します(鹿児島大学 学位論文)。

出典: 鹿児島大学 学位論文

家庭での処理・調理時の実務:エラの取り扱いと衛生上の注意

茹でる前後のエラの外し方(ステップ)

茹で後の外し方(おすすめ)
1. 冷めてから軍手を装着し、甲羅の前端に親指をかけて手前に起こします。
2. 胴体側面に並ぶ灰色の“ひらひら”(エラ)を根元からつまんで引き抜きます。
3. カニ味噌(甲羅側)に混入しないよう、甲羅を別皿に置いて作業します(株式会社中村商店)。

生から処理する場合(必要時のみ)

1. 甲羅を外すときに身割れを防ぐため、包丁の背で関節を軽く折ってから開きます。
2. エラを先に全て外し、流水で胴体側を軽くすすいで水気を拭きます(識別はマルツオンラインの解説を参照)。

出典: 株式会社中村商店/マルツオンライン

捨てるべき理由と保管時の衛生ポイント

– 風味・食感の面で利点が少なく、匂い移りの原因になりやすい。
– 取り除くほど可食部(身・内子・外子・味噌)の風味をクリアに保てます。
– 甲羅を開けたら速やかに外し、冷蔵は密閉・短時間、冷凍は可食部のみを推奨します(調理実務に基づく一般的指針)。

調理で誤って混入させないためのチェック方法

– 甲羅側(味噌)に灰色の薄片が混じっていないかを盛り付け前に目視で確認。
– 胴体側面の左右に“ひらひら”が残っていないか、指でなぞって検査。
– 取り外し後はキッチンペーパーで断面の水気と残渣を拭い取る。

最後に:カニのエラについて知っておくべき要点と次に取る行動

この記事で押さえるべき3つのポイント

  • 灰色のヒダ状“ひらひら”がカニのエラ(ガニ)で、胴体側面に並びます(マルツオンライン/株式会社中村商店)。
  • エラは水中の酸素を取り込む呼吸器官で、甲殻類では脚の根元に付随します(神奈川県立 生命の星・地球博物館/理化学研究所 生命誌研究館)。
  • 家庭調理ではエラは取り除いて廃棄するのが基本で、味噌と混同しないよう別皿で作業することが安全です

実際にカニを扱うときのチェックリスト

  • 甲羅を外したら、胴体側面の灰色のヒダを全て外したか。
  • 甲羅側の味噌にエラ片が混入していないか。
  • 可食部は速やかに冷蔵・冷凍、エラは直ちに廃棄したか。

参考文献・さらに詳しく学ぶための資料

– エラの基本機能や魚との比較は、博物館・学術館の公開資料やWikipediaの構造解説が役立ちます(下記参考)。

以下は参考文献・資料として挙げられた主要リンクです。

参考