干潟のカニ完全ガイド:種類と観察法
最終更新日:2025-12-31
目次
干潟のカニってどんな生き物?この記事で分かること
干潟とカニの関係を一目で理解する
干潟は潮の満ち引きで現れる砂泥の広がりで、豊富な有機物と微生物が集まり、カニにとっては餌場かつ隠れ家になります。実際に福岡市の多々良川河口干潟では20種以上のカニが確認され、ヨシ原や塩生植物の根元まわりが重要な餌場・避難場所として機能していることが報告されています(出典:NPO法人 ふくおか湿地保全研究会「多々良川河口干潟のカニ類」https://www.npo-fwcrg.org/多々良川河口干潟のカニ類)。
干潟のカニは一般に春から秋にかけて活発に動き、干潮時に地表へ現れます。 とくに大潮から中潮の干潮前後は行動が見やすく、観察の好機になりやすいでしょう。
筆者メモ:首都圏と九州北部の干潟でフィールド観察を続けており、春から秋の夕方干潮時はチゴガニやコメツキガニの群れが一気に地表活動を始める様子を繰り返し観察しています。この記事では、その現場感も織り交ぜて解説します。

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干潟でよく見かける代表的なカニと見分け方(アシハラガニ・コメツキガニ・チゴガニなど)
アシハラガニの外見と特徴
アシハラガニは河口や内湾の砂泥干潟、ヨシ原の縁から潮間帯の砂底まで幅広い環境にすみ、最大で約40cmにも達する巣穴を掘って生活するのが特徴です(出典:環境省 生物多様性情報システム「アシハラガニ」https://ikilog.biodic.go.jp/Investigation?invReq=life&life_id=105&eventremarks_id=56)。甲羅はやや四角く、泥色〜褐色で周囲に溶け込みやすく、太めの脚で泥上をしっかり歩きます。巣穴の入り口近くに新しい泥団子や足跡があれば、活動中の個体が近いサインと読み取れます。
見分けポイント
- ヨシ原周辺のやや締まった泥地に開く、直径2〜3cm前後の穴
- 甲羅が横長で、全体に泥色で保護色が強い
- 夜間や満潮前後に活動が活発になる傾向
コメツキガニの小型特徴と見分けポイント
コメツキガニは小型で甲幅1cm前後、白っぽい砂色の体色で、砂表面の有機物を口器でこし取りながら小さな砂団子(ペレット)を次々と残す給餌痕が目印になります。河口干潟では同じスナガニ科の仲間とともに大きな群れを作ることが多く、開けた砂地に一斉に現れて一斉に隠れるメリハリのある行動が観察できます(出典:環境省資料「干潟調査の一環として『カニ生息…』」https://www.env.go.jp/content/900541704.pdf)。
見分けポイント
- 直径数ミリの砂団子が一面に点在する“食痕のじゅうたん”
- 甲羅は丸みがあり、体色が淡く、素早く後退して巣穴に逃げ込む
- 干潮のピーク前後に数十〜数百個体の群れが広がる
チゴガニ・スナガニ科の特徴と群れの見つけ方
チゴガニは小型で、巣穴近くの砂泥の小さな構造物や地形の違いに敏感に反応し、地域ごとに行動の差が見られることが報告されています(出典:OWS-NPO「干潟のカニからみた 生態的特性の多様性」https://www.ows-npo.org/media-download/1867/f3b7ffaa1ce6c3e3/)。オスはハサミを掲げるディスプレイ行動で知られ、群れの縁辺部に立つと一斉に巣穴へ引き込む様子が見られます。ハクセンシオマネキ(スナガニ科の近縁種)やコメツキガニと同所的に群れる干潟も多く、開けた砂泥の平坦地を探すと見つけやすいです(出典:環境省資料 https://www.env.go.jp/content/900541704.pdf)。
見分けポイント
- 巣穴が密集し、その周囲に細かな砂盛りや筋状の掘削痕
- オス個体が片方のハサミを振るうディスプレイ(潮位や時間で頻度が変動)
- 少し離れた距離から双眼鏡で群れの縁を観ると全体像が分かりやすい

砂泥干潟やヨシ原でのカニの生息場所と日本での分布傾向
砂泥干潟とヨシ原:餌場・隠れ家としての役割
砂泥干潟は微細な有機物が沈降し、底生微生物やデトリタスが豊富で、干潟のカニにとって主要な餌資源になります。ヨシ原は根茎がつくる隙間や植生の陰が捕食者からのシェルターになり、巣穴を安定させる役割も果たします。植生縁辺部は水分や塩分が適度に保たれやすく、多くの種で利用頻度が高いゾーンです。
河口周辺の環境要因と分布パターン
河口は塩分が淡水から海水まで連続的に変化し、底質も砂優勢から泥優勢までグラデーションを作ります。干潟のカニはこの環境勾配に沿って住み分け、粒径が細かい泥質域を好む種、砂質で水はけのよい場所を好む種などが共存します。潮汐差が大きい湾奥や、河川流入が安定するエスチュアリーに多様性が高まる傾向が見られます。
地域別で見られる典型例
– 太平洋岸湾奥(例:東京湾内湾の河口干潟):人工護岸の間に残る砂泥地にコメツキガニやチゴガニの群れが成立し、ヨシ帯が広がる水域でアシハラガニが目立ちます。
– 日本海側の潟湖・内湾:塩分が季節で変化し、夏季に小型種の活動が増える場面が観察しやすいです。
– 九州北部〜瀬戸内:潮差が大きく、干潮時の露出範囲が広いため、群れの一斉活動や広域の食痕が見やすい傾向があります。

カニの巣穴・行動から読み取る生態(餌、群れ、繁殖のしかた)
巣穴の構造と機能(深さ、形状、周辺の痕跡)
干潟のカニは種ごとに巣穴の太さや深さ、形状が異なります。直線〜L字状のシンプルな構造から、途中に球状の休息室をもつタイプまで多様で、巣穴は高温や乾燥、捕食者から身を守る避難場所として機能します。入り口周辺の新しい砂盛り、ペレット状の砂団子、放射状の足跡は直近の活動サインで、観察時の手がかりになります。
餌の取り方と食性(雑食性の具体例)
多くの干潟のカニは雑食性で、デトリタス、珪藻を中心とした微細藻類、微小な無脊椎動物を摂ります。コメツキガニの砂団子は、砂を口器で“ふるい”、有機物だけを飲み込んで不要な砂を吐き出した結果で、広域に独特の模様を描きます。アシハラガニは落葉やヨシの枯死部も利用し、巣穴の近くで小片にして持ち込む様子が観察できます。
筆者メモ:夕刻の干潮で、群れの縁から順に給餌を始め、カラスなどの影が走ると一瞬で巣穴へ退避、しばらくして同じ位置から再開する“間欠的な採餌リズム”が何度も見られました。
繁殖行動と季節性(産卵・幼生の動き)
繁殖期は多くの種で春〜夏に重なり、オスは巣穴の周囲でディスプレイや争いを行い、メスは受精卵を腹部に抱えて成熟させます。満潮の夜間や大潮のタイミングに合わせて幼生を水中へ放出し、プランクトン期を経て稚ガニが干潟へ戻ります。潮汐と季節に同期した生活史は、観察のベストタイミング選びにも直結します。
よくある質問:干潟のカニについて知りたいこと
見分け方に関するQ&A
- Q. コメツキガニとチゴガニの違いは?
A. コメツキガニは砂団子の食痕が広く残り、体色が淡く群れで地表を歩きます。チゴガニは巣穴周辺に密集し、オスがハサミを振るディスプレイが見られます(詳細は本記事「コメツキガニ」「チゴガニ」の項を参照)。 - Q. アシハラガニの巣穴の見つけ方は?
A. ヨシ原の縁で直径2〜3cmの穴と新しい泥盛りを探します。深さがあるため無理に掘らず、活動痕を手がかりに観察距離を保つのがコツです。
巣穴や生態に関するQ&A
- Q. 巣穴の前に小さな砂の団子が並ぶのはなぜ?
A. 砂から有機物だけを摂る“ふるい食い”の結果で、不要な砂を吐き出した痕です。 - Q. 群れが一斉に消えるのは危険を察知したから?
A. 影や振動に敏感に反応し、合図のように一斉退避します。数分で同じ位置へ再出現することが多いです。
食用・安全性に関するQ&A
- Q. 干潟のカニは食べられる?
A. 種や地域のルール、水質によって大きく異なります。モクズガニなど食用例のある種もありますが、採捕禁止区域やサイズ規制があり、水質・寄生虫リスクも考慮が必要です。観察にとどめ、採捕は各自治体の規則と最新情報を必ず確認してください。 - Q. 触っても安全?
A. 小型種は挟む力が弱いですが、素手の接触は避け、観察後は手洗いを徹底しましょう。生体は濡れた手で短時間だけ扱い、すぐ元の場所へ戻すのがマナーです。
干潟でカニを見つけて観察する手順と安全な楽しみ方
観察のベストシーズンと潮汐タイミング(春~秋、干潮時)
– 時期:春〜秋が活動的で、特に初夏〜盛夏は群れの行動が見やすい傾向です。
– 潮汐:干潮の前後2時間が狙い目です。新月・満月周辺の大潮期は露出面積が広がり、観察チャンスが増えます。
– 時刻・天候:風が弱く、直射の弱い朝夕はカニの警戒心がゆるみ、近距離観察に向きます。
現地でのステップ:到着〜観察〜撤収まで
- 事前準備:潮位表で干潮時刻を確認し、現地のルール(保護区・立入制限)をチェックします。
- 到着・観察ポイント選定:ヨシ原の縁や開けた砂泥平坦地、足跡や砂団子が多い場所を優先します。
- 接近:5〜10m手前でしゃがみ、双眼鏡で全体像を把握してから、ゆっくり間合いを詰めます。影が群れにかからない位置取りがコツです。
- 記録:写真は望遠主体、動画で群れの一斉行動を記録すると後で学びが深まります。
- 撤収:踏み跡で巣穴を潰さないよう来たルートを戻り、ゴミは必ず持ち帰ります。
持ち物・服装・観察のマナー
– 服装・装備:長靴またはネオプレーンブーツ、汚れてもよい長袖長ズボン、帽子、日焼け止め、虫よけ、薄手の手袋、双眼鏡・フィールドスコープ、スマホ防水ケース。
– 安全:ぬかるみや潮位の上昇に注意し、単独行動は避けます。天候急変時は無理をせず早めに退避します。
– マナー:植生帯の踏み荒らしを避け、生体に触れない・持ち帰らない・巣穴を掘らないを徹底します。やむを得ず移動させた場合は、同じ場所へすぐ戻しましょう。
なぜ干潟のカニを守るべきかと、個人でできる保全アクション
干潟のカニが果たす生態系の役割
干潟のカニは砂泥を攪拌して酸素を送り込み、微生物活動を活性化する“生物攪拌”の担い手です。落葉や有機物の分解を促し、栄養塩を循環させることで、干潟全体の生産性と生物多様性を底支えしています。巣穴や食痕は他生物のハビタットにもなり、干潟の“基盤エンジニア”といえる存在です。
生息地減少の現状と影響
埋め立てや護岸化、流入河川の改修、水質悪化、外来種の影響などにより、河口干潟は全国的に縮小・分断が進んできました。すみ場所の減少はカニの個体群サイズや遺伝的多様性の低下を招き、干潟生態系の機能そのものの弱体化につながるおそれがあります。
地域で参加できる保全活動・観察会への参加方法
- 地元の環境NPO・自然観察会の定例イベントに参加し、モニタリングや清掃活動に関わる。
- 自治体や環境学習施設が発行する潮見・生きもの観察カレンダーを活用し、適切な時期に無理のない観察を行う。
- SNSで観察情報を共有する際は、希少種や繁殖地の詳細位置を伏せ、保全に配慮した発信を心がける。
- ふくおか湿地保全研究会など、地域の団体の活動レポートを読み、支援・寄付・ボランティアの参加を検討する。
まとめ:干潟のカニ観察の要点
干潟のカニは、砂泥・ヨシ原・河口の環境勾配を巧みに使い分け、春〜秋の干潮時に多彩な行動を見せます。現場では「群れの食痕」「巣穴の痕跡」「潮汐のタイミング」を手がかりに、距離を保って観察するのが成功の近道です。生態系を支える存在としての価値を踏まえ、採捕や踏み荒らしを避ける配慮を重ねながら、地域の保全活動にも目を向けていきましょう。
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