海のカニの飼い方 入門ガイド【安全飼育】
最終更新日:2025-12-31
筆者:kani-tu.com編集部(海水飼育・磯採集歴10年/自宅での海カニ短期〜長期飼育の実体験に基づき執筆)
磯で出会った小さなカニを自宅で観察したい、でも海のカニの飼い方が分からず不安という方へ、採集直後からの立ち上げ、海水づくり、水槽レイアウト、餌やり、メンテ、脱走防止までを安全第一で手順化しました。水道水ではなく海水(または人工海水)を用いる理由や、失敗しやすいポイントも実例ベースで整理しています。
目次
海で捕まえたカニを自宅で安全に飼うために最初に準備すること(海水の作り方)
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天然海水と人工海水の違い
海のカニは基本的に塩分を含む水環境が不可欠で、淡水の水道水では短時間で弱ってしまうため、天然海水か人工海水を使う必要があります(Cainz、HugKum)。天然海水はミネラル組成が自然で微量元素も豊富ですが、採取場所によっては汚染物質や病原体が混入するリスクがあり、濾過や前処理がないと初心者には管理が難しいと言えるでしょう。人工海水は専用ソルトを浄水に溶かすだけで安定した塩分・pHを再現しやすく、再現性が高いのが特徴です。筆者の経験でも、短期観察なら現地海水でも管理可ですが、1週間以上の飼育や室内立ち上げでは人工海水のほうがトラブルが少なくおすすめです。
補足:天然海水との違いは「自然由来のミネラルと微量元素の豊富さ」対「再現性と安定性」。
人工海水の作り方とおすすめの組成
- 推奨塩分:30〜35‰(比重1.020〜1.026、25℃換算)を目安に調整します。海洋の平均塩分は約35‰と報告されており、これを基準に個体の様子を見ながら微調整すると安定します(NOAA)。
- pH目安:7.8〜8.3(弱アルカリ)。海水域の一般的なpHレンジに収めると、甲殻類の代謝や脱皮が安定しやすいです(NOAA関連資料)。
- 作り方(手順)
- バケツに浄水(RO水やカルキ抜き済み水)を用意し、必要量より少し少なめに張ります。
- 規定量の人工海水ソルトを入れ、パワーヘッドかエアレーションで最低30分は攪拌します。
- 比重計(ハイドロメーター)または屈折計で塩分を測り、ソルトまたは水で微調整します。
- ヒーターまたは冷却で水温を飼育目標に合わせ、pH試薬で確認します。
- できた人工海水は半日程度循環させると、溶け残りやpHのブレが落ち着きやすいです。
水道水をそのまま使えない理由(塩素・不純物)と対処法
- 水道水には消毒目的の塩素(残留塩素)が基準値以上で必ず含まれており、甲殻類のエラや体表にダメージを与えるため、そのままの使用は避けるべきだと言われています(厚生労働省の水道水質基準の枠組み、自治体水道局の残留塩素解説)。
- 対処法としては、以下のいずれかが有効です。
- 市販の中和剤(チオ硫酸ナトリウムなど)で「カルキ抜き」を行い、人工海水を作る
- 浄水器(RO/DI)で塩素・重金属を除去した水を使う
- 緊急時のみ、汲み置き48時間+強めのエアレーションで塩素を飛ばす(確実性は中和剤やROに劣ります)
- 飼育水は「海水の準備(天然海水または人工海水)」を最優先で整えるのが安全です(Cainz、HugKum)。
補足:出典として Cainz/HugKum の解説を参照。
海のカニに適した水槽レイアウトの作り方(陸地・底砂の選び方)
磯場にいる小型のカニの多くは半陸生で、呼吸や休息のために必ず上陸できる「陸地スペース」を必要とします。ろ過器やホース、飾りが足場になると脱走リスクが急増するため、スロープ状の石やプラットフォームで安全に上陸できる構造を用意し、フタは必須にしましょう。一方で完全に水棲寄りの種は水域の比率を高めつつ、浮き石や人工島で休憩場所を確保します。いずれも隠れ家(シェルター)と併せて設置すると落ち着きやすいと紹介されています(Tropica、Crab Lab)。
半陸生と海生で異なる陸地の作り方
陸地スペースを確保することで、半陸生カニは呼吸と脱走防止の両立が図れます。フタは必須、脱走リスクを下げる設計が重要です。
底砂(天然砂/サンゴ砂)の選び方と敷き方
- 天然砂:現地の砂をよく洗浄してから薄く敷くと、行動が自然になりやすい一方、持ち込んだ微生物で水が白濁することがあります。
- サンゴ砂(アラゴナイト):粒が丸く歩きやすい上、緩やかなpH緩衝が期待でき、海水飼育では扱いやすい選択肢です。
- 厚み:2〜3cmを基本に、巣穴行動を観察したい場合はもう少し厚めにしても良いでしょう。
TropicaやCrab Labでも、底面に砂やサンゴ砂を敷き、陸地と水場、シェルターを組み合わせる基本レイアウトが推奨されています。
給排水や水深の決め方
- 半陸生:水深5〜15cmを目安に、傾斜で自然に上陸できる設計が安全です。
- 海生寄り:水深15〜30cm程度でも良いですが、必ず空気に触れられる足場を用意します。
- 給排水:弱めの水流が理想で、吸い込み口はスポンジガードで保護し、脱走の足場にならない配管ルートを選びましょう。
これらは「水槽レイアウト(陸地・隠れ家・底砂)」の要点であり、初期の安定度を大きく左右します(Tropica、Crab Lab)。

カニが隠れて安心できるシェルターの作り方と脱走を防ぐ工夫
石・流木・人工シェルターの利点と設置方法
- 石:重ねてトンネル状にすると安定感があり、視線を遮ることでストレス軽減に役立ちます。沈下時の挟まり事故を避けるため、底面直置きで固定してから砂を周囲に寄せると安全です。
- 流木:風合いが良く人気ですが、海水ではタンニンの溶出で水が着色・酸性化する場合があるため、煮沸と長期の水抜きを済ませ、量は控えめにするのが無難です。
- 人工シェルター:陶器の土管やプラ洞、PVCパイプは軽くて洗いやすく、形状を組み合わせやすい点が利点です。複数方向に出入り口を作ると喧嘩回避に有効です。
脱走しやすい箇所のチェックポイントと対策
- 水槽の縁:内側の水滴やシリコンの出っ張りが足場になるため、内縁を乾燥させ、返し付きフタや細目メッシュで全面を覆います。
- 機材:配線・エアチューブ・吸盤・ろ過機のケースは立体的な梯子になりがちです。取り回しを外側にまとめ、通気用の隙間にはスポンジやメッシュで栓をします。
- 重り:フタは必ずロックするか、軽い場合は重しを置いて浮き上がりを防ぎます。
カニのストレスサイン(甲羅や行動)と緩和方法
- サイン例:昼夜問わず落ち着きなく高所へ登ろうとする、動きが極端に少ない、食欲不振、甲羅の色が急に薄い・黒ずむ、脱皮不全の兆候など。
- 緩和策:シェルターを増やし視線を遮る、照度を落とす、水質(塩分・アンモニア・pH)と水温を適正化する、同居個体が多い場合は隔離する、給餌量を見直す。
海のカニに適した水温・水質管理の具体的な数値と測定方法
カニ種別に見る許容水温(目安:5〜28℃)
日本の磯で見られる小型の温帯性カニは概ね10〜25℃が安定域で、短時間の変動として5〜28℃を許容することがありますが、急変は強いストレスとなるため避けましょう。夏場は高温対策、冬場は低温と凍結対策を行い、日較差は±2℃以内を目指すと安心です。
塩分・pH・アンモニアのチェック方法と器具
- 塩分:屈折計(推奨)または比重計で毎回測定し、蒸発で上がった塩分は真水の足し水で戻します(NOAAの平均塩分35‰を基準化)。
- pH:試薬またはpHメーターで確認し、7.8〜8.3を目標に維持します。
- アンモニア/亜硝酸:魚・甲殻向けの試薬でチェックし、理想はNH3/NH4+=0、NO2−=0、硝酸塩はできれば20mg/L未満を維持します。数値が上がったら給餌量の見直しと部分換水を行います。
ヒーター・クーラー・フィルターの選び方と使い方
- ヒーター:サーモ一体型で水量に合ったワット数を選び、ヒーターガードで火傷・接触破損を防ぎます。
- 冷却:小型水槽は冷却ファンでも有効ですが、塩分上昇に注意し、屈折計で毎日補正します。高温地域は小型チラーの導入が安全です。
- フィルター:外掛けや投げ込み式ならメンテが容易で、吸い込み口はスポンジでカバーします。強すぎる水流は避け、止水域を作らない程度に循環させるとよいでしょう。
海のカニに与える餌の種類と与え方(生餌・人工餌の使い分け)
しらす・あさりなどの生餌と市販の人工飼料の特徴
カニは基本的に雑食性で、しらす、あさり、エビのむき身、イカ、乾燥クリル、海藻(焼きのり少量)などの海産物に良く反応します。市販のザリガニ・甲殻類用ペレットも利用価値が高く、水の汚れが読みやすい点がメリットです(T-Aquagarden)。
給餌頻度と量の目安(観察ポイント)
- 1〜2日に1回、体サイズに対して少量を与え、2〜3分で持ち去る程度を基準にします。
- 活性や脱皮周期で食欲が変わるため、残餌やフンの量、水のにおいを観察して微調整します。
餌が残ったときの処理と水質悪化を防ぐ方法
- 残餌はピンセットやスポイトで速やかに回収し、必要に応じて小さな餌皿を使って散乱を防ぎます。
- 生餌中心のときは水質悪化が早いため、部分換水の頻度を上げ、ろ材の目詰まりをチェックします。
出典:雑食性で海産物や市販の甲殻類用フードが適する解説(T-Aquagarden)
よくある質問(FAQ)
- 海のカニにどんな餌をあげればいい? 少量のしらす・あさり・エビ、乾燥クリル、甲殻類用ペレットがおすすめで、残らない量を1〜2日に1回が目安です(T-Aquagarden)。
- 海のカニは陸地が必要? 磯の小型種は半陸生が多く、必ず上陸スペースを用意します。水場と陸地、隠れ家の組み合わせが基本です(Tropica、Crab Lab)。
- 人工海水で飼育できる? はい、安定した塩分・pHを再現でき、管理が容易です。塩分30〜35‰、pH7.8〜8.3を目安に、比重計・試薬で管理すると良いでしょう(NOAA基準参考)。
- カニの水温は何度まで大丈夫? 多くの温帯性の磯カニは10〜25℃が安定域で、短時間なら5〜28℃の範囲を許容する場合がありますが、急な変動は避けてください。
- 海のカニが脱走するのを防ぐ方法は? 返し付きのフタで全面を覆い、配線・チューブを足場にしない取り回しにし、吸水口や隙間はメッシュで塞ぐのがポイントです。
日常の水換えとメンテナンス手順(初心者向けチェックリスト付き)
定期的な水換えの割合と手順(部分換水のやり方)
- 割り合い:週1回を目安に10〜20%の部分換水を行い、同じ塩分・温度の人工海水をあらかじめ用意します。
- 手順:
- サイフォンで底の汚れを吸い取りながら既存水を抜く
- 新しい人工海水を静かに注ぎ、塩分と温度を再確認
- フィルターの目詰まりを軽く洗浄(飼育水で)
日常チェック項目(脱皮・動き・体表の観察)
- 食欲と行動量、甲羅の欠けや黒ずみ、脚の欠損、呼吸の速さ、異臭の有無を毎日短時間で確認します。
- 脱皮後は体が柔らかく外敵に弱いため、刺激を避け、殻はしばらく残しておくとカルシウム補給に役立つことがあります。
白濁や急変時の初期対応と記録の取り方
- まずエアレーションを強化し、活性炭を入れて臭いと着色を吸着します。
- 残餌や死骸を除去して50%程度の換水を段階的に実施し、塩分・アンモニア・pHを測定して原因を切り分けます。
- 「いつ・何を・どれだけ」行ったかをノートやアプリで記録し、再発防止に生かします。
初心者に向いたカニのサイズと種類の選び方(飼育のしやすさ基準)
初心者向けのサイズと種(小型〜中型の利点)
小型〜中型で温和な磯のカニは、少水量でも管理しやすく、餌の受けも良い傾向があります。大型のワタリガニ類は水量・ろ過・冷却の要求が高く、挟む力も強いので初心者には難度が上がると言えるでしょう。
サイズで変わる必要水槽・餌・隠れ家の違い
- 小型:30〜45cm水槽でも管理しやすく、シェルターは小口径を複数用意。
- 中型以上:60cm以上を推奨し、餌はカロリー過多を避け、強固なシェルターと重い石でレイアウトします。
捕獲時の選び方と保護すべき個体(親・稚ガニ)
抱卵個体(お腹に卵)の持ち帰りは避け、極端に小さい稚ガニは自然に戻す配慮が望ましいです。地域のルールや禁漁期間がある場合は必ず順守してください。
実践チェックリストと失敗しない初めての海カニ飼育ステップ
購入前チェックリスト(水槽・海水・隠れ家・餌)
- 人工海水ソルト/屈折計(比重計)/pHとアンモニア試薬
- 水槽+しっかり閉まるフタ/スポンジ付きフィルター/ヒーターや冷却手段
- 底砂(サンゴ砂推奨)/シェルター(石・土管・PVC)/スロープ用の平たい石
- ピンセット/サイフォン/餌皿/活性炭
- 餌(しらす・あさり・乾燥クリル・甲殻類用ペレット)
設置直後〜最初の1週間に行うべき確認項目
- 塩分30〜35‰、pH7.8〜8.3、水温の安定(±2℃以内)を毎日測定
- 残餌ゼロ運用と部分換水の実施、ろ過の目詰まり確認
- 脱走経路の再点検とシェルターの増設、喧嘩時は隔離対応
長期飼育のためのリライト・記録のすすめ
- 給餌量、換水日、測定値、異常時の対処を見える化し、季節や個体差に合わせて運用を更新します。
- 装備や手順を「今の自分の水量」に最適化し続けることが、安定飼育の近道です。
まとめ
海のカニの飼い方で最重要なのは、海水(人工海水推奨)の正しい準備と、半陸生に配慮した「陸地+水場+隠れ家」のレイアウト、そして塩分・水温・pH・アンモニアの基本管理です。餌は少量高頻度で残さず、部分換水と脱走対策をルーチン化すれば、観察もメンテもぐっと楽になります。まずは小型個体から、小さく始めて記録しながら改善するステップで、安全で楽しい海カニライフを育てていきましょう。


補足:Infographicは本文の該当箇所直後に配置します。








