フクロムシとカニの寄生関係を解説
更新日: 2026-01-01
磯や市場で見かけるカニに、腹側に小さな袋状の“できもの”が付くことがあります。これはフクロムシが作る「エキステルナ」で、カニの体内外に広がる高度な寄生構造です。フクロムシとカニの関係を、分類から生活史、体内でのふるまい、宿主の“メス化”までやさしく整理します。
目次
フクロムシの分類と主な宿主:フジツボの仲間でイソガニに寄生する理由
フクロムシは甲殻類のフジツボ類に近縁の寄生性グループ(根頭類:Rhizocephala)に分類されます。見た目は貝やカニとは異なりますが、系統的にはフジツボの仲間に位置づけられています(出典:Wikipedia「フクロムシ」)。
イソガニなど主な宿主と寄生の頻度・分布多くは沿岸域のカニ類に寄生し、日本各地の磯や干潟でイソガニ類などへの寄生例が報告されています。地域の環境事務所の観察記録でも、沿岸のカニにフクロムシの外部生殖嚢(エキステルナ)が付いた事例が紹介されています(出典:近畿地方環境事務所)。フクロムシがカニを選ぶ背景には、浅場に多い宿主密度や生活史の同期が関係すると考えられます(出典:Wikipedia、近畿地方環境事務所)。

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フクロムシはどのグループに属するか(系統的位置)
フクロムシは根頭類(Rhizocephala)に分類される寄生性グループで、フジツボ類に近縁です。見た目は小さな貝のようにも見えますが、実際にはカニを宿主として生活します(出典:Wikipedia「フクロムシ」)。
イソガニなど主な宿主と寄生の頻度・分布
沿岸域のカニ類に寄生するのが一般的で、日本各地の磯や干潟で事例が報告されています。宿主密度の偏在や生活史の同期が寄生の成立・頻度に影響を与えると考えられます(出典:近畿地方環境事務所、 Wikipedia)。
フクロムシの生活史と侵入方法:キプリス幼生がどうやってカニに寄生するか
卵から成虫までの主要ステージ(キプリス幼生の位置づけ)フクロムシは卵から孵化した後、フジツボ類に共通する遊泳期を経て、宿主探索を担う「キプリス幼生」になります。キプリス幼生は化学・物理的手がかりを用いてカニを探し当て、寄生の決定を行います(一般的なフジツボ類の生活史に基づく整理)。
キプリス幼生の付着と針状器官による体内侵入の過程寄生が成立する鍵は、キプリス幼生が体表の微細構造に付着し、針状の器官で内容物を注入するプロセスです。報告では、幼生がカニの体表毛の根元などに取り付き、針のような器官で宿主体内へ侵入して寄生生活を開始すると説明されています(出典:幻冬舎plus)。
- 侵入のイメージ(手順)
- 宿主探索:キプリス幼生が沿岸のカニを探す
- 付着:体表毛の根元などに選択的に着生
- 侵入:針状器官で組織内に内容物を注入
- 体内展開:内部で根状の組織を広げ、栄養を吸収
- 外部化:腹部側に袋状のエキステルナを形成して生殖

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カニ体内での寄生構造:インテルナ(根状器官)とエキステルナ(袋状部)の役割
インテルナ(根状の器官)が中腸腺から栄養を奪う仕組みフクロムシは宿主の体内に「インテルナ」と呼ばれる根状の組織を張り巡らせます。特に消化酵素を分泌する中腸腺に入り込み、効率的に栄養を吸収することが示されています(出典:東京大学 学位論文要旨)。
エキステルナ(外部に現れる袋状の部分)の構造と生殖への関与腹部下面に突出する袋状の「エキステルナ」は、フクロムシの外部生殖嚢です。ここで配偶や産卵・胚発生が進み、成熟に伴って宿主の行動や生理にも影響を及ぼすと考えられます。外見的にはカニの抱卵に似ており、誤認されることもあります(出典:Wikipedia)。

オスのカニが“メス化”する過程と生理・行動への影響(脱皮変化と卵守り行動)
脱皮ごとに現れる外形の変化(はさみ・腹部の変化)
寄生後、オスでは次の脱皮から徐々に外形変化が現れやすくなります。典型的にははさみが相対的に小さくなり、腹部が扇形に拡大してメスの形態に近づく傾向が報告されています。これによりエキステルナの保持もしやすくなります。
卵守り行動を引き出す行動操作の様子
エキステルナが露出すると、宿主はそれを保護するかのように腹部で覆い、体を清掃するなど、抱卵メスに似た“卵守り”行動が見られることがあります。これは神経・ホルモン系の変化が行動パターンを切り替えるためと考えられます。
生殖機能が失われる(生殖不能化)のメカニズムと結果
インテルナによる栄養搾取と内分泌の攪乱により、精巣や交尾行動は抑制され、生殖不能化が進むと考えられます。結果として宿主は自らの繁殖成功を失い、フクロムシの繁殖に資源を振り向けるよう誘導されます。
観察・研究で分かった寄生の実例と学術的裏付け:事例・論文・報道のまとめ
学位論文や学術的要旨に見る寄生メカニズムの記録
日本の大学の学位論文要旨では、インテルナが中腸腺へ侵入して栄養を吸収する様子が整理され、寄生メカニズムの要点が示されています(出典:東京大学 学位論文要旨)。
報道・ドキュメンタリーなどの事例紹介
一般向けの解説記事では、キプリス幼生の付着・侵入という独特の“寄生開始”が図解的に紹介され、オスの外形・行動変化も取り上げられています(出典:幻冬舎plus)。また、地域の環境事務所のブログ等には、磯で観察された寄生個体の記録が掲載されています(出典:近畿地方環境事務所)。
現状の未解明点と調査・保護で注意すべきこと
現時点で明らかでないメカニズムと研究上の課題
– 内分泌・神経系への介入の分子機構は未解明な点が残ります。
– 宿主範囲の決定要因や、環境条件と寄生率の関係も地域差が大きく、系統立った比較研究が必要です。
– 人為改変環境(港湾・藻場減少)が寄生動態に与える影響の定量評価も課題です。
野外観察や保全活動での実務的な注意点
観察時はエキステルナを無理に剥がさないでください。個体の生理に大きな負担を与えます。記録は日時・場所・宿主種・エキステルナの有無を写真と共に残すと、研究に有用です。水産現場では寄生個体を混載しない選別が望ましく、衛生的取り扱いと情報共有の徹底がポイントです。
筆者の観察メモ:沿岸の市場選別や磯観察で、腹肢の内側に半透明〜黄褐色の小袋が付いたカニを複数確認しています。抱卵と似るため、腹部をそっと開いて付着位置と質感を確認するのが見分けのコツです。フクロムシ個体は研究価値が高いので、可能なら記録を優先するとよいでしょう。
まとめ
- フクロムシはフジツボに近縁の寄生性甲殻類で、沿岸のカニに高頻度で寄生します(フクロムシ カニ)。
- キプリス幼生が体表に付着し、針状器官で侵入してインテルナ・エキステルナを形成します。
- 宿主の栄養を吸収し、オスの“メス化”と生殖不能化、卵守り様の行動を引き起こします。
- 野外では無用な剥離を避け、写真と記録を残すのが良策です。市場や通販の現場では選別と情報共有が重要です。
参考
- フクロムシ – フクロムシ
- 甲殻のない甲殻類【動物】 – 甲殻のない甲殻類【動物】
- 学位論文要旨詳細 – 学位論文要旨詳細
- カニの心と体を完全に乗っ取るフクロムシ – カニの心と体を完全に乗っ取るフクロムシ








