カニの脱皮を完全解説:成長と再生
更新日:2025-12-29
目次
カニはなぜ脱皮するのか?成長・修復・繁殖に果たす役割
外骨格をもつカニは、そのままの殻では大きくなれません。だからこそ、殻を脱いで新しい殻に着替える「脱皮」が欠かせないのです
(京都大学 白浜水族館 脱皮で成長する理由)。
成長のための脱皮メカニズム
- 外骨格は硬く伸びないため、内部で新しい殻を用意し、古い殻を外すことで体サイズを更新します(京都大学 白浜水族館)。
- 脱皮の目的は成長だけではないものの、成長は最も普遍的な理由といわれます(海遊館)
タカアシガニの脱皮。

脚や甲羅の修復と寄生虫の除去
- 失った脚や割れた甲羅は、脱皮を重ねることで段階的に回復していきます(相模川ふれあい科学館)
失ったもの。 - 表面付着物や寄生虫の一部は、殻が更新される過程で剥がれ落ちやすくなると紹介されています(海遊館)。
繁殖や生態に関わる脱皮の役割
- 種によっては、成熟や交尾タイミングと脱皮が密接に関連すると解説されます。繁殖行動と結びつく例があることが、水族館の観察記録でも触れられています(海遊館)。
脱皮の仕組みを段階で解説:新しい殻の形成から抜け出すまで
脱皮は「準備→殻を外す→膨らませる→硬化」という段階に分かれます。直後は殻が柔らかく、体内水分を取り込んで体を一回り膨らませるのが特徴です。
新しい殻はいつ・どこで作られるのか
- 脱皮直前、古い殻の内側で新しい殻の下地(柔らかい層)が形成されます。
- 必要なカルシウムは体内に一時的に回収・再配分され、脱皮後の硬化に使われます。
古い殻が剥がれる生体プロセス
- 体内酵素などで旧殻と皮膚の間が分離し、甲羅の割れ目から体を押し出していきます。
- 脱皮直後は殻が柔らかく、細胞が横方向に広がって体全体が大きく見える状態になります
(カニはなぜ脱皮をするの!?仕組みは!?)。
抜け出す順序と時間(種類による違い)
- 多くは背中(甲羅)側が割れて、胸→腹→脚の順に抜けます。
- 所要時間は個体差・種差が大きく、数十分から数時間に及ぶことがあります。
幼生期〜成体で変わる脱皮頻度:ズワイガニと松葉ガニの具体例
脱皮頻度は、幼いほど多く、成体になるほど少なくなります。ズワイガニ(オスの地域ブランド名が松葉ガニ)を例に見ましょう。
ゾエア→稚ガニ期の脱皮サイクル
- ズワイガニの幼生は、プレゾエアからゾエア1期・2期へと脱皮を繰り返し、やがて稚ガニになります
(京都府 脱皮と成長(応用編))。
甲幅別の脱皮頻度(5cm未満・5cm以上)
- 稚ガニ期(甲幅5mm程度から)は脱皮を繰り返し、甲幅5cm未満の間は年に数回、5cm以上では年1回程度へと減っていくと解説されています
(竹内水産 カニの成長と脱皮の関係)。
最終脱皮とは:メスとオスの違い
- 漁業現場や解説記事では、成熟に伴い「最終脱皮(以降ほぼ脱皮しない段階)」の概念で語られることがあります。雌雄で到達時期に差があると説明されることが多いものの、地域・資料で表現が異なるため最新の漁業情報を併読するのがおすすめです。
松葉ガニの脱皮回数と食用サイズ到達の目安
- 松葉ガニは幼少期に数カ月単位で脱皮し、成長に伴い年1回程度へ移行、合計14〜16回の脱皮で食用サイズに達するとの解説があります(マルツ水産)
(松葉ガニは脱皮するの?気になるカニの生態をプロが解説!)。
脱皮直後の甲羅の状態と『水ガニ/モモガニ』が市場でどう扱われるか
脱皮直後のカニは「殻が柔らかい・体が一回り大きい・身が痩せやすい」という特徴があります。体内に水分を取り込んで体積を増やし、のちに殻を硬化させるため、短期的には身入りや旨味が薄く感じられることが多いです。
- 市場では、脱皮直後〜直近のズワイガニを「水ガニ」「若松葉」「モモガニ」「ズボガニ」などと呼ぶ地域があります。いずれも身入りが軽く価格が抑えめに扱われる傾向がある一方、殻が柔らかく食べやすいと評価されることもあります。
- 呼称・扱いは地域や漁協の基準で異なるため、通販や産地直送では「脱皮時期」「身入り」の表示確認が安心です。
よくある質問(FAQ)
Q1. カニはなぜ脱皮をするのですか?主な理由を教えてください。
A. 主目的は成長ですが、欠損部位の修復、寄生・付着物の除去、繁殖に関わる役割もあります
(京都大学 白浜水族館 脱皮で成長する理由、 海遊館 タカアシガニの脱皮、 相模川ふれあい科学館 失ったもの)。
Q2. カニは一生のうちに何回くらい脱皮しますか?頻度や時期は決まっていますか?
A. 種・環境で幅があります。ズワイガニでは幼少期は数カ月単位、成体期は年1回程度が目安で、食用サイズ到達までに14〜16回との解説があります
(京都府 脱皮と成長(応用編)、 竹内水産 カニの成長と脱皮の関係、 マルツ水産 松葉ガニは脱皮するの?)。
Q3. カニの脚やハサミは脱皮で本当に再生しますか?元の大きさに戻るまで何回くらいかかりますか?
A. 段階的に再生し、数回の脱皮を要することが多いです。回数は個体差・栄養状態で変わります
(相模川ふれあい科学館、 note個人記事)。
Q4. 脱皮したてのカニ(ミズガニ)はなぜ味が落ちると言われるのですか?食べ頃との違いは?
A. 脱皮直後は殻が柔らく体内水分が多く、身入り・旨味が一時的に薄くなりやすいからです。殻が硬化し筋肉が充実してくると食べ頃に近づきます。
Q5. 飼育しているカニがもうすぐ脱皮しそうかどうか見分けるポイントはありますか?
A. 甲羅色のくすみ、甲羅縁のわずかな割れ目、食欲低下、隠れる時間の増加などがサインです。安全のため隔離・静穏・水質安定を心がけます(詳細は本記事下部の飼育セクション参照)。
Q6. 脱皮と市場価値(『水ガニ』『モモガニ』などの呼称)はどのように関係しますか?
A. 一般に脱皮直後の個体は身入りが軽く、地域呼称で区別され価格にも反映されます。産地表示や「身入り」表記の確認がおすすめです。
脚やハサミを失った後の再生:脱皮を重ねて戻るプロセス
失った脚を自ら切り離す「自切」は、捕食から逃れるための防御反応として知られます。再生は1回で元通りではなく、数回の脱皮で段階的に太く長く戻っていきます。
自切とは何か/なぜ起きるか
- 強い捕食圧や物理的ストレス時に、関節部で切り離して命を優先する行動が見られます。
再生は一回で戻らない:段階的な成長の仕組み
- 脱皮のたびに再生肢が拡大し、数回を経て左右差が目立たなくなります。
- 回復速度は個体差・栄養・水温などに左右されます(相模川ふれあい科学館)。
観察・飼育で確認される回復例
飼育下の観察でも、数回の脱皮が必要とされる事例が紹介されています
(『カニの足』は生え変わるのか?)。

飼育・観察で使える脱皮の兆候と脱皮時に避けるべき危険
脱皮は命がけのイベントです。予兆を見極め、静かで安全な環境を整えることが重要です。
脱皮前に見られる行動や外観の変化
- 甲羅や関節部がくすみ、甲羅縁に微細な割れ目が出ることがあります。
- 食欲低下、底でじっとする時間の増加、隠れ家にこもる行動が増えます。
- 体を左右に振る、背中を反らすなどの準備動作が見られることがあります。
脱皮直後の管理(環境・餌・取り扱い)
- 隔離と静穏が基本です。強い水流や振動、直射光を避けます。
- ろ過・エアレーションは安定運転にし、水質(塩分・pH・温度)を急変させないでください。
- 24〜48時間は無理に給餌せず、殻硬化後に少量から再開します。カルシウム源を確保します。
- 触らない・持ち上げない・写真目的で動かさないことが安全です。
脱皮が危険な理由と捕食・死亡リスクの軽減方法
- 殻が柔らかく自力防御が困難なため、同居個体の攻撃や捕食対象になりやすいです。
- 隠れ家(シェルター)を複数設置し、同居魚・甲殻類とは隔離するのが無難です。
- 水質悪化や酸欠は致命的になりやすく、事前の換水・掃除と安定運転が予防になります。
脱皮で押さえておきたい要点と参考情報(更新日・筆者の観察メモつき)
本記事の要点まとめ
- カニの脱皮は、成長・修復・寄生物の除去・繁殖に関わる重要な現象です(京都大学 白浜水族館、海遊館)。
- 脱皮直後は体内水分が多く殻が柔らかいため、身入りと味は一時的に落ちやすい傾向があります。
- ズワイガニは幼少期に高頻度、成体で年1回程度の脱皮になり、食用サイズまで14〜16回の目安があります(京都府、竹内水産、マルツ水産)。
- 失った脚は数回の脱皮で段階的に再生します(相模川ふれあい科学館)。
参考情報と根拠(公的機関・学術情報の出典)
公的機関・水族館の公開資料を中心に根拠を示しました。詳細は本末尾「参考」をご覧ください。
筆者の飼育観察メモと今後の更新予定
筆者は小型の海産カニ・ヤドカリの飼育経験があり、脱皮前の食欲低下と隠れ家へのこもり、脱皮直後の静穏環境の重要性を繰り返し確認しています。特に「触らない」「隔離する」「水質を急変させない」の3点が失敗を減らしました。今後は、ズワイガニの「最終脱皮」に関する一次情報の追加、地域ごとの「水ガニ/モモガニ」呼称の定義ソース拡充、飼育時の水質パラメータ事例を追補予定です。更新日:2025-12-29








