生ガニの捌き方と安全手順ガイド
最終更新日: 2025-12-28
監修・執筆: kani-tu.com コンテンツライター(築地や山陰の港での仕入れ同行・自宅調理で年間30杯超の活きズワイと毛ガニを下処理・調理した実体験に基づき解説します)
目次
導入
生のカニを上手に捌けると、鍋や焼きガニ、甲羅味噌焼きまで一気に料理の幅が広がります。安全と衛生を第一に、初心者でも失敗しにくい手順とコツをまとめました。
「生ガニの捌き方(生のカニをどう扱うか)」の基本を押さえ、怪我と食中毒のリスクを避けながら、身を崩さずきれいに取り出すポイントを実践的にご紹介します。
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生ガニ(活きカニ)を安全に扱うための道具と準備
必須の道具一覧(軍手・包丁・キッチンばさみ・まな板など)
- すべり止め付き軍手(または耐切創手袋)と薄手の使い捨て手袋の二重装着
- 厚みのある包丁(出刃など)とキッチンばさみ(刃が厚く丈夫なもの)
- 大きめのまな板+濡れ布巾や滑り止めマット
- たわし・歯ブラシ、ボウル、ザル、キッチンペーパー
- バット(縁あり)とポリ袋(廃棄用)
- 氷と塩で作る氷塩水(活けの鎮静用)
生鮮魚介は低温管理が基本で、4℃以下の冷蔵環境が推奨されています(厚生労働省)。室温放置は避け、道具・食材ともにできるだけ冷えた状態を保つと安心です(厚生労働省「夏期に多い食中毒を防ぐために」参照)。
作業スペースの整え方と手順(滑り防止・明るさ)
まな板の下に濡れ布巾を敷いて固定し、明るい場所で作業します。縁のあるバットの上で捌くと、汁が広がらず衛生的で後片付けも楽になります。
包丁・はさみは「生カニ専用」にし、野菜や他の食材用とは明確に分ける準備をしておきます(農林水産省は器具の使い分けと洗浄による交差汚染防止を推奨)。
怪我防止と衛生対策(手袋、器具の使い分け、作業前後の手洗い)
活きカニは脚や爪の反発が強いため、軍手で保持し、刃先の向きを常に自分から外へ向けます。作業前後は手洗い・器具洗浄・消毒を徹底し、まな板は生もの用とそれ以外を分けてください(農林水産省「食中毒を防ぐ」)。
参照: 厚生労働省(低温管理/4℃以下)、農林水産省(交差汚染防止)
カニの部位名称と食べられる・食べられない場所の見分け方
甲羅・胴体・脚・爪・ふんどし(前かけ)の位置と役割
腹側の三角形の薄い殻は「前かけ」または「ふんどし」と呼ばれ、ここを外すと甲羅が開けやすくなります(福井県の解説より)。脚・爪は関節ごとに分かれており、太い部位ほど身が厚く可食部が多いのが特徴です。
エラ(ガニ)・胃袋など食用に向かない部位の見た目
甲羅の内側にあるスポンジ状の器官がエラ(通称ガニ)で、一般的に食べません。取り除いて廃棄するのが基本です(青森県水産振興課)。口器のすぐ後ろに位置する胃袋(砂嚢)は内容物を含むため、こちらも外します。
メスの内子・外子、カニ味噌の位置と特徴
メスのズワイガニには、体内にあるオレンジ色の「内子」と、腹側に抱えた「外子」があり、いずれも珍重されます(鳥取県)。甲羅内の褐色~緑褐色のペーストがいわゆるカニ味噌で、うま味が強く加熱料理と相性が良いです。
参照: 福井県(ふんどしの呼称)、青森県(水産課・エラは食べない)、鳥取県(内子・外子)

捌く前の下処理:洗い方と活けガニの〆方(身質を落とさないコツ)
タワシや流水での効果的な洗い方(泥・付着物の除去)
流水下で甲羅表面・脚の関節・爪の付け根をたわしや歯ブラシで丁寧にこすり、泥や付着物を落とします。長時間の浸け置きはうま味が流出しやすいので、短時間の洗浄にとどめるのがおすすめです。
活けガニの〆方の手順と時間の目安(身質維持の観点)
- ボウルに氷水を作り、約3%の塩を溶かして氷塩水にします。
- カニを甲羅を上にして5〜10分浸け、動きが鈍くなったら取り出します。
- ふんどしを外して甲羅を開け、最初に中枢部(口器の後方)を包丁で断つと素早く失神・失血させやすく、身の締まりも保ちやすいです。
- あるいは甲羅を開ける工程を先に行い、速やかに内臓部を処理してから切り分けます。
家庭では「冷蔵庫や冷凍庫で10〜15分だけ冷やして動きを弱める」方法も使われますが、凍結は避け、あくまで鎮静目的にとどめると良いでしょう。
下処理での衛生注意点(器具や手の洗浄)
洗浄と下処理の区切りごとに手洗い・器具の洗浄を行い、都度新しいキッチンペーパーで水気を拭き取ります。低温を保つため、下処理は手早く分業し、不要な室温放置をなくします(低温管理は厚生労働省の基本指針に合致)。
参照: 厚生労働省(低温管理/4℃以下)、農林水産省(交差汚染防止)
ふんどし(前かけ)を外して甲羅を開く基本手順(初心者向け)
ふんどしの外し方(押し方と引き方のコツ)
腹側の三角形のふんどしの先端を指で起こし、手前に引いて外します。滑る場合はペーパー越しに保持すると安全です。
腹側から包丁や指で甲羅を剥がす方法(力の入れ方)
ふんどしを外したら、腹側の隙間に親指をかけ、甲羅と胴体の隙間を広げます。キッチンばさみや包丁の背でこじるとテコが効き、甲羅を割らずに開けやすくなります。
甲羅を壊さずに中身を取り出す際の注意点
甲羅を開いたら、まず胃袋(砂嚢)を外します。ここには砂や内容物があるため、食べずに取り除くのが推奨です(水産庁)。この段階でエラも一緒に除去しておくと後工程が楽になります。
参照: 水産庁(胃袋など内容物は除去推奨)
脚・爪を胴体から外す方法と関節ごとの切り分け(身を崩さないコツ)
脚・爪を片側ずつ外す手順と持ち方の注意点(ケガ予防)
胴体と脚の付け根を片側ずつ持ち、関節を意識して外側へひねると外れやすいです。爪は軍手でしっかり保持し、返しで手を傷つけないように体の外方向へ力をかけます。
ハサミや包丁を使った関節での切り分け方
関節のくびれにキッチンばさみを入れ、節ごとに切り分けます。太い脚は、殻の薄い側面(白い内側)に沿って縦に切れ目を入れると、後で身を取り出しやすくなります。
殻を割らずに身をきれいに取り出す実践テクニック
- 縦に入れた切れ目を起点に、殻を軽く開いて身を押し出す。
- 爪は甲羅側からV字に切り込みを入れてから殻を開く。
- 仕上げは竹串で筋に沿ってそっと外すと、身崩れを防げます。
エラ・胃袋など食べられない部位の見分け方と取り除き方
エラ(ガニ)の色・形での見分け方
甲羅の内側両側にある灰白色〜薄茶色のスポンジ状組織がエラです。指で簡単に外れるので、左右とも全量取り除きます(一般に可食としません)。
胃袋や砂嚢の位置と安全に取り除く手順
口器の後ろ、甲羅側の三角形の袋状部分が胃袋(砂嚢)で、つまんで引けば外れます。内容物がこぼれないように、先に甲羅を水平に保って取り外すのがコツです。
取り除いた部位の廃棄方法と衛生上の注意
取り除いたエラ・胃袋はポリ袋にまとめ、可能なら一時的に冷凍して臭いを抑えてから廃棄します。作業後は手指・器具・シンクの洗浄と消毒を忘れずに行いましょう。
よくある質問(生ガニの捌き方)
生きたカニを捌く前に、どのように〆れば安全で身質も落とさずに済みますか?
氷塩水(約3%)で5〜10分鎮静→ふんどしを外して甲羅を開け、口器後方の中枢を素早く断つ流れが家庭では実践的です。凍結は避け、必要最小限の時間で低温・清潔を保つと身質の劣化を抑えられます。
カニのどの部分が食べられず、どの部位を捨てるべきですか?
エラ(ガニ)と胃袋(砂嚢)は基本的に食べません。甲羅を開けたら最優先で除去し、ポリ袋で密閉して廃棄してください(各自治体の指導や水産庁の考え方に沿います)。
カニ味噌や内子・外子をこぼさずにきれいに取り出すコツはありますか?
甲羅を水平に保ち、スプーンで縁から中央へ寄せ集めます。メスの内子・外子は圧をかけずにそっと外し、キッチンペーパーで余分な水分を取ると形が保てます。
初心者でも失敗しにくい、生ズワイガニの基本的な捌き方の手順は?
- 洗浄→氷塩水で鎮静→ふんどしを外す→甲羅を開ける
- エラ・胃袋除去→脚・爪を関節で切り分け→殻に切れ目→身を外す
- この順序だと迷いにくく、身崩れや怪我のリスクを減らせます。
生ガニを捌いたあとの保存方法と、いつまでなら安全に食べられますか?
生のままは4℃以下で24時間以内消費が目安、加熱するなら中心まで十分に火を通します。長期保存は急速に小分け冷凍し、冷蔵庫内解凍で扱ってください(加熱条件は厚生労働省の指針「中心75℃で1分以上」が目安)。
カニ味噌・内子・外子をこぼさずきれいに取り出す方法と活用法
甲羅にカニ味噌を集める手順とこぼれを防ぐコツ
甲羅を水平に保持し、スプーンで縁から中央へ寄せます。液状が多い場合はキッチンペーパーで軽く油分を拭い、調味の塩分は控えめから足すと風味が立ちます。
内子・外子を潰さず取り出す方法(メスの扱い方)
内子は胴体側に付着しているので、薄い膜ごとそっと外し、ペーパーで水気を取り除きます。外子は抱卵部を下から支え、包丁の背で付け根を外すと形が崩れにくいです。
取り出した味噌・内子の保存とおすすめレシピ例
0〜2℃でラップ密着+密閉容器に入れ、当日〜翌日までに加熱利用するのが安心です。おすすめは甲羅味噌焼き、味噌バターの土鍋ごはん、内子の酒蒸し和え、味噌クリームパスタなどです。
生ガニと茹でガニで違う点・共通点と用途別の切り方(鍋用・焼きガニ)
生ガニと茹でガニの身質や扱い方の違い(触感・冷却の扱い)
生ガニは身が透明感を帯び、加熱するとふっくら膨らみます。茹でガニは水分が抜けにくく、身離れが良い一方で再加熱のし過ぎは硬くなりやすいです。いずれも高たんぱく・低脂肪で、ビタミンB12や亜鉛などを含みます(文部科学省「日本食品標準成分表」)。
鍋用に合わせた切り方と盛り付けの工夫
鍋用は脚を関節ごとに切り分け、太脚は殻に縦の切れ目を入れる「半割」で火通りを均一にします。胴体は4〜6等分に割り、出汁にうま味を移しやすいよう、殻の尖りはハサミで落として食べやすく整えます。
焼きガニや刺身風(冷製)の用途別ポイント
焼きガニは水分をペーパーで拭き、殻側から焼いて香ばしさを引き出します。いわゆる刺身風の提供は衛生管理が徹底された専門店に委ねるのが無難で、家庭では十分加熱を基本としましょう。
参照: 文部科学省(カニ類の栄養)
捌いたあとの衛生管理と保存方法(いつまで安全に食べられるか)
捌いた直後〜冷蔵保存(目安温度・期間)
捌いたら速やかに4℃以下へ。ペーパーで水気を拭き、空気に触れないようラップ密着+密閉容器で保管し、生のままは24時間以内の調理を目安にします(低温管理は厚生労働省の指針と整合)。
冷凍保存の方法と解凍の注意点
脚・爪は小分けで空気を抜いて急速冷凍し、-18℃以下で2〜3週間を目安に。解凍は冷蔵庫内で低温のまま行い、再冷凍は避けます。解凍中のドリップはこまめに除去して雑菌増殖を抑えます。
加熱基準(中心温度)と食中毒リスクへの対策
海水性の腸炎ビブリオなどは生食・加熱不十分でリスクがあるため、中心までしっかり加熱することが推奨されます(厚生労働省)。一般的な目安は中心温度75℃で1分以上です(厚生労働省「『75℃1分以上』の加熱条件について」)。生食は避け、手指・器具・作業台の洗浄と器具の使い分けで交差汚染を防ぎましょう。
参照: 厚生労働省(腸炎ビブリオ予防 / 75℃1分目安)
まとめ
- 生ガニは「低温・清潔・短時間」の三原則で、安全第一に扱うのが基本です。
- ふんどしを外して甲羅を開き、エラと胃袋を最初に除去すると、身崩れを防ぎながら効率良く捌けます。
- 脚・爪は関節で切り、殻に切れ目を入れてから身を外すと美しく仕上がります。
- 保存は4℃以下で短期、加熱は中心75℃1分以上を目安にして食中毒リスクを避けましょう。
用途に合わせた切り分けを押さえれば、鍋・焼き・甲羅味噌焼きまで美味しさを引き出せます。初めてでも今日から実践できる手順で、安心・安全に「生のカニの捌き方」を身につけてください。







