カニが泡を吹く理由と対処法を徹底解説

カニが泡を吹く理由と危険度・対処法

最終更新日:2025-12-27

筆者について:海産物の流通現場と水族館の飼育担当者への継続取材経験をもとに、活ガニの取り扱い・飼育トラブルの実態と対処を解説します。

カニが泡を吹くのは本当に危険なサインなの?

カニが箱の中や水槽の壁際でブクブクと泡を吹く様子は珍しくなく、市場の荷揚げ直後や家庭の飼育でときどき見られる現象です。多くの場合は陸上に長く置かれたときや、水槽内で酸素が足りなくなったときに目立ち、弱っているのではと心配になるでしょう。

出典に基づく結論から言うと、泡は呼吸困難(酸欠)やエラの乾燥ストレスに伴うサインである可能性が高いと考えられます。越前がにの解説では、エラ保護のための粘り気のある水分が空気と混ざって泡立つ仕組みが紹介されており、危険信号として扱われています(出典:福井新聞「越前がにが泡を吹くのはなぜ?」)。

よくある観察例(市場や飼育で見られる状況)

  • 氷詰め輸送後に発泡スチロールを開けると、呼吸孔から細かい泡が連続して出ている。
  • 水槽の溶存酸素が低下した夜間に、壁面でじっとしながら泡をまとっている。
  • 陸生・半陸生のカニが乾いた陸場に長く滞在した直後に泡が増える。

この記事で明らかにすること

  • カニがどこで呼吸し、泡がどこから出るのかという基本構造。
  • 陸上で泡が生じる生理学的メカニズムと、水中で目立ちにくい理由。
  • 飼育や保管中に泡を吹いたときの具体的対処と再発防止策。

(根拠:泡は酸欠やエラ保護反応のサインとされます。出典:福井新聞)

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カニはどこで呼吸している?エラ(ガニ)と呼吸孔の仕組み

カニが泡を吹く理由を正しく理解するには、まず呼吸器官の位置と水の流れを押さえることが肝心です。泡はしばしば「口から出ている」ように見えますが、実際には異なる出口から出ていることが多いのです。

エラ(ガニ)の位置と働き

カニのエラ(地方名でガニとも) は脚の付け根の内部にあり、そこに海水が通ることで酸素を取り込み、二酸化炭素を放出します。エラは湿潤状態で機能が保たれるため、乾燥は大敵です(出典:Maribu Aqua、Aquarium Favorite)。

水の流れ:脚の付根から呼吸孔へ

海水は脚の付け根付近から取り込まれ、エラ室を通過したのち、甲羅の両側面にある呼吸孔から吐き出されます。つまり、水の出入りは「脚の付根→エラ→呼吸孔」という経路をたどるのが基本です(出典:Maribu Aqua、Aquarium Favorite)。

泡は口ではなく呼吸孔から出る理由

泡が口元に見えても、実際は呼吸孔から出た泡が甲羅の形状に沿って前方に流れ、口の周辺に溜まって見える場合が多いと説明されています。このため「口から泡」という表現は観察上の錯覚で、正確には呼吸孔由来と考えるのが妥当でしょう(出典:Maribu Aqua、Aquarium Favorite)。

陸上で泡が発生するメカニズム:エラの乾燥と粘液の役割

水中では平常に呼吸できるカニでも、陸上に長く置かれるとエラが乾きやすくなり、酸素交換が難しくなります。ここで体はエラを守るために粘液を分泌し、その粘液と残存水分が空気と混ざって泡として可視化されます。

エラが空気に触れると何が起きるか

エラ表面が乾燥すると拡散によるガス交換効率が落ち、呼吸困難を招きます。カニはエラ室に水分を保持しようとし、結果として水分の循環が乱れ、外見上の変化として泡立ちが目立ってきます。

粘液(粘膜)によるエラ保護の仕組み

生物が泡を作るメカニズムの総説では、乾燥や機械的刺激から組織を守るために分泌される粘性の高い分子が気液界面で安定な泡膜を形成することが示されています。カニでも同様に、エラ保護の粘液が空気と混ざり、細かな泡列として現れやすいと考えられます(出典:J-STAGE「一泡吹かせる生物の泡」)。

泡はどのようにして見えるようになるか(空気と水分の相互作用)

エラ室の水分や粘液が呼吸孔から排出される際、空気を巻き込んで微細な泡が形成され、甲羅表面を伝って連続的に観察されます。水中では同じ分泌が起きても泡がすぐに破裂・拡散し視認しづらいのに対し、乾いた空気中では泡膜が保たれやすく、顕著に見えるのが特徴です(出典:J-STAGE)。

水中では泡を吹かないのは本当?水中と陸上での違いと陸生カニの例外

水中ではエラが常に湿っておりガス交換が安定するため、目に見える泡はほとんど観察されません。仮に微細な気泡が生じても、周囲の水に拡散して可視化されにくく、陸上に比べて「泡を吹く」現象が目立たないのが実際です。

一方、陸生・準陸生のカニはエラ室に水分を保持する構造や行動特性をもち、湿った環境を選好しながら陸上生活に適応しています。乾燥が進むとやはり泡が見られることがあり、河口や干潟での採集直後、展示ケースの乾燥時、輸送の待機中などで目立つケースが報告されています。

漁獲・流通現場でも、氷温で運ばれた活ガニを開封した直後や、計量・選別で陸上に長く置いた際に泡が増えることがあります。これは水中と陸上の環境差が生理的負担として現れたサインと受け止めると判断がしやすいでしょう。

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よくある質問(FAQ)

  • Q. カニは水中では泡を吹かないの?
    A. 水中でも微小な気泡は生じ得ますが、すぐ拡散・破裂するため視認されにくく、陸上のように「泡だらけ」に見えることは少ないと考えられます。
  • Q. カニの泡は口から?呼吸孔から?
    A. 見た目は口周りに見えやすいものの、基本は甲羅側面の呼吸孔から出た泡が流れて見えるケースが多いです。呼吸器の構造上、その理解が合理的です(出典:Maribu Aqua、Aquarium Favorite)。
  • Q. 泡を吹くカニを飼っているとき、どう対処すればいい?
    A. まず酸素、温度、乾燥の3点を直ちに見直し、溶存酸素の確保とエラの湿潤維持を優先します。具体的手順は次章のチェックリストをご覧ください。
  • Q. 陸生のカニも泡を吹くことがあるの?例外はあるの?
    A. 陸生・準陸生種でも乾燥や低酸素のストレス時に泡が目立つ場合があります。種によって許容環境は異なるため、生態に合わせた湿度・水場の確保が重要です。

飼育中に泡を吹くカニを見つけたときに取るべき具体的な対処法

まず確認すること:水位・水質・酸素供給

– 溶存酸素:エアレーションの吐出量、フィルターの水流、夜間の酸素低下を点検します。
– 水位と逃げ場:完全水没が苦手な種には呼吸用の陸場(足場)と、エラを湿らせられる浅場の両方を用意します。
– 水質:アンモニア・亜硝酸・pH・塩分(海水性種)を簡易試薬で確認し、急変を避けながら是正します。
– 温度:高水温は酸素溶解度を下げるため、適正温度へ緩やかに戻します。

短期対応(応急処置)の手順

  1. 強めのエアレーションを追加し、水面を揺らしてガス交換を即時に改善します。
  2. 種に応じた適正塩分・温度へ、数十分〜数時間かけて段階的に合わせます。
  3. 陸上で泡が多い場合は、湿ったティッシュや海水霧吹きで乾燥を一時的に抑え、エラの湿潤を保持します。
  4. 混泳を一時停止し、ストレス源(捕食・争い・騒音・強光)を避けます。
  5. 輸送直後は安静を優先し、掴む回数や長時間の陸上曝露を減らします。

長期対策:飼育環境の整え方

  • エア供給の冗長化:エアポンプは二系統化し、停電時の簡易バックアップも検討します。
  • 生物ろ過の安定化:ろ材容量を見直し、過密飼育を避け、定期的に部分換水を行います。
  • 陸場設計:半陸生種には乾燥しにくい陸場素材と、簡易ミストでの湿度維持を組み合わせます。
  • 餌と残渣管理:過剰給餌を避け、食べ残しは早めに除去して水質悪化を抑えます。
  • 観察ルーチン:夜間も含めた行動・呼吸リズムを記録し、泡の出現条件を特定して改善します。

補足:食用の活ガニを持ち帰った際に泡が多い場合は、真水に浸けず、冷暗所で湿り気を保ちつつ早めの調理に移るのがおすすめです。長時間の陸上放置や高温は避け、必要に応じて海水を軽く霧吹きして乾燥を防ぎます。

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結論:泡を吹くカニはどう受け止めるべきか(見分け方と今すぐの行動)

泡の見分け方(危険度の目安)

  • 軽度:短時間・断続的な泡、行動は敏捷で摂餌も正常。環境調整で改善しやすい。
  • 中等度:連続的な細泡と活動低下、甲羅側面に泡が滞留。早急な酸素・湿潤対策が必要。
  • 重度:泡に加えてぐったり・転倒・エラ室の乾燥が顕著。速やかな環境是正と専門家相談を検討。

今すぐやるべき3つのアクション(優先順位付き)

  1. 酸素を増やす:エアレーション強化と水面撹拌で溶存酸素を確保。
  2. 乾燥を止める:種に応じてエラ室の湿潤を保つ環境へ戻す。
  3. 数値を測る:温度・塩分・アンモニア/亜硝酸を測定し、段階的に是正。

参考文献と次に読むべき情報

呼吸器の構造と泡の物理学的背景は下記の参考をご覧ください。飼育者は、種ごとの適正水質・湿度・温度レンジを事前に調べ、夜間の酸素低下対策を準備しておくと安心です。

参考