海のカニ飼育の基本と安全な始め方
更新日: 2025-12-30
目次
海で採ったカニを自宅で飼う前に知っておくべきポイント
飼育でよくある失敗とその理由
海で採ったカニを自宅で飼育するときは、持ち帰りから立ち上げ初期の管理でつまずくことが多いです。代表的な失敗は、**真水で洗ってしまう**、比重や水温を急変させる、酸欠やフィルターの吸い込みで落とす、隠れ家不足でストレスや共食いが起きる、脱走対策が甘い、の5点です。特に「水合わせ」を省略すると急変ショックを起こしやすく、初日〜3日目の落ち込みにつながります。水合わせを入念に行い、水換えをこまめにすることが安定飼育の近道と解説されています(カニを飼育してみよう! – tropica.jp)。
また、持ち帰り時の温度ショックや酸欠も致命的です。海水は塩分(おおむね塩分濃度約35‰)と温度が安定しているため、輸送時は採集地の海水で満たした容器に入れ、保冷と通気を確保するとダメージを減らせます(NOAA Ocean Service)。
筆者の体験談: 磯ガニ類やヤドカリを毎年10匹前後、10年以上飼育してきましたが、初期の落ち込みの多くは「急激な比重・水温変化」と「隠れ家不足」でした。逆に、比重1.023付近を維持し、隠れ家を多めに組むと、脱皮も順調で長期飼育しやすくなります。
この記事を読むとできるようになること
- 人工海水の正しい作り方と、比重1.023への合わせ方がわかります(採集した生物を飼ってみよう!! – 三番瀬水槽教室)。
- 底砂・隠れ家・ライブロックの選び方と安全なレイアウトが組めます。
- 採集〜持ち帰り〜水合わせのステップを迷わず実行できます。
- 水温・水質・餌・水換えなど日常管理の“基準”を自分で決められます。

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人工海水の作り方と比重(1.023を目安に調整する方法)
人工海水の素の選び方と溶かし方
人工海水は「海水魚・無脊椎用」の表記がある製品がおすすめです。カルシウムや微量元素のバランスが安定し、カニやヤドカリにも使いやすい配合が多いからです。浄水器水またはカルキ抜きした水道水に、規定量を少しずつ加えて強めに撹拌し、完全に溶解させます。溶け残りはpHや比重のムラを生むため、別容器で24時間のエアレーションを行うと安定しやすいです。
海の平均塩分は約35‰で、一般的な海水比重はこの塩分に対応します(NOAA Ocean Service)。飼育水もこのレンジに近づけると、採集した海の生体に優しくなります。
比重を測る道具と1.023へ調整する手順
- 道具: 比重計(フロート式)または屈折計(塩分計)、温度計、メスカップ。
- 手順:
- 人工海水を作ったら、水温を測ります(測定は25℃付近が安定)。
- 比重を測り、1.023を目安に確認します(採集した生物を飼ってみよう!! – 三番瀬水槽教室)。
- 低ければ人工海水の素を少量ずつ追加し、高ければ淡水を少量足して再測定します。
- 30分ほど循環・エアレーションしてから再計測し、ぶれが収まったら使用します。
ポイント: 比重は水温の影響を受けるため、測定と調整は同温度で行うと誤差が小さくなります。

カニに優しい底床の選び方と敷き方(サンゴ砂・大磯砂の利点)
サンゴ砂・大磯砂の特徴とおすすめ理由
底床は「歩行しやすさ」「隠れやすさ」「水質安定」を同時に満たすと、海のカニのストレスを下げられます。サンゴ砂は適度な粒径で歩行しやすく、貝殻質がpHの下がり過ぎを緩和しやすい点が特徴です。大磯砂は角が立ちにくく、見た目も自然で汎用性が高いです。いずれもストレス軽減に寄与すると紹介されています(海で獲ってきたカニの飼い方について – crab-lab.biz)。
汽水域のカニを中心に飼う場合は、サンゴ砂の緩衝作用が強すぎると感じることもあるため、半量を大磯砂にするなど、組み合わせて狙いのpHに調整するのがおすすめです。
底砂の厚さと掃除のコツ
- 厚さは2〜3cmを目安に、浅場は1.5cm、隠れ家周りは3cmと変化をつけると行動が豊かになります。
- 掃除はプロホースなどで週1回、軽くゴミを抜く程度に留め、バクテリア層を壊し過ぎないようにします。
- 角張った石や金属片は外傷の原因になるので避けます。

隠れ家とライブロックの設置例(安全に隠れられるシェルター作り)
シェルターに使える素材(流木・貝殻・ライブロック)
安全に潜れて、容易に出入りできる形を複数用意します。ライブロックや多孔質の石、巻貝の殻、トンネル状の陶器シェルターが定番です。流木は海水で煮沸し、浮力を抜いてから使うと配置が安定します。サイズの異なる隠れ家を数カ所に分散すると、縄張り争いを避けやすくなります。
安全な配置と掃除のしやすさを両立するコツ
- 底面直置きではなく、下に薄いアクリル板を敷いて沈み込みと転倒を防ぎます。
- 石同士は接点を少なく積み、転がらないよう要所を水槽用シリコンで固定します。
- 掃除を想定し、ユニット単位で持ち上げられる構成にするとメンテが短時間で済みます。
採集から持ち帰るときの正しい方法と捕獲直後の水合わせ手順
持ち帰り時の容器・温度管理のポイント
- 容器はフタ付きの幅広タッパーや小型クーラーボックスが扱いやすいです。
- 採集地の海水を十分に入れ、保冷剤を外側に当てて温度上昇を抑えます。
- 酸欠防止に、容器は満水にせず空気層を確保し、揺れを減らします。
- 直射日光は厳禁です。車内は特に短時間でも高温になるため、必ず日陰へ。
ステップごとの水合わせ(袋・バケツを使ったやり方)
- 手順:
- カニ入りの採集海水をバケツに移し、ヒーターやファンで室内水槽と同温度に近づけます。
- エアチューブで点滴法を行い、1滴/秒で30分、2滴/秒で30分と段階的に水槽水を足します。
- 合計1.5〜2時間かけて比重・pH・温度を近づけ、最後にカニだけをそっと移します。
- 輸送水は水槽へ入れないようにし、初日は給餌せず安静にします。
コツ: 水合わせ中は隠れ家代わりの貝殻を一つ入れておくと、暴れて怪我するリスクを減らせます。
水温と水質の管理目安(適温範囲とカルキ抜きの必要性)
適正水温の目安(5〜28℃の幅と種ごとの違い)
日本の磯に多いカニは温度耐性が広く、概ね10〜25℃で安定しやすい一方、夏場の急激な高温や冬場の急冷はストレスになります。水槽は直射日光を避け、夏はファンやクーラー、冬はヒーターで緩やかに調整しましょう。沿岸の季節変動を見ておくと管理の目安になります(気象庁 海面水温の監視)。
カルキ抜き・給湯器・ヒーターの使い方
水道水は消毒のため残留塩素が含まれます。必ずカルキ抜き(中和剤)を使い、エアレーションで十分に馴染ませましょう。残留塩素に関する基礎知識は日本水道協会のQ&Aが参考になります(日本水道協会)。給湯器の温水はガス由来の微量成分や溶存ガスの偏りが出やすいため避け、ヒーターでゆっくり目標温度へ上げるのがおすすめです。
餌の種類と与え方:雑食性のカニに合うエサと頻度
おすすめの餌(しらす・あさり・市販の人工飼料)
海のカニは多くが雑食性で、しらすやあさりむき身、海水魚用の人工飼料に良く反応します(カニの餌は何がいい? – アクアガーデン)。乾燥クリルや昆布片、茹で野菜少量もバリエーションとして使えます。カルシウム補給に甲殻類用フードを週1回混ぜると、脱皮不全の予防に役立ちます。
給餌頻度と食べ残しの取り扱い
- 1日1回、15分で食べ切る量から開始し、様子を見て隔日給餌に調整します。
- 食べ残しはアンモニア上昇の原因なので、ピンセットやスポイトで必ず回収します。
- 就寝前の給餌は残餌確認が遅れるため、明るい時間帯がおすすめです。
よくある質問(FAQ)
海のカニに人工海水は必要?塩水で代用できる?
食塩水では微量元素やアルカリ度が不足し、pHも不安定になりやすいです。人工海水の素で海水を再現し、比重は1.023前後を目安に調整すると安定します(三番瀬水槽教室、NOAA)。
海のカニの水温は何度が適正?
多くの磯性のカニは10〜25℃で安定しやすいですが、真夏の高温は要注意です。季節ごとの沿岸水温を目安に、夏は冷却、冬は加温で緩やかに合わせましょう(気象庁)。
海のカニの餌は何がいい?
しらす、あさり、市販の海水魚・甲蟹類用フードが与えやすいです。少量多品目でローテーションし、残餌は必ず回収します(アクアガーデン)。
海のカニを水槽で飼うための隠れ家はどう作る?
ライブロックや貝殻、陶器シェルターを複数配置し、倒壊しないよう固定します。入口は広め、出口は複数にして、喧嘩と行き止まりを避けましょう。
海のカニを持ち帰る時の正しい方法は?
採集地の海水で満たした容器に入れ、保冷と酸欠対策を行い、揺らさないことが基本です。到着後は点滴法で水合わせし、初日は給餌を控えます。
初心者でも海のカニは飼育できますか?必要な初期費用はどれくらいですか?
小型水槽(20〜30cm)、人工海水の素、比重計、底砂、簡易フィルター、ヒーター/ファン、シェルター、餌を揃えると、概ね5,000〜15,000円で始められます。長期を目指すなら、屈折計や小型クーラーの導入も検討すると良いでしょう。
水換えの頻度と日常メンテナンスの具体的な手順
部分換水と全換水の使い分け
- 週1回、全水量の15〜25%を目安に部分換水します。新水は前日から用意し、比重・温度を合わせておきます。
- 匂いの悪化や白濁など急変時のみ全換水を検討し、その後は餌量や濾過を見直します。
- 換水のたびにガラス面のコケと底砂表層のゴミを軽く抜くと、蓄積を防げます。
フィルター・底床・シェルターの清掃ポイント
- スポンジや外掛けフィルターは2〜4週間ごとに飼育水で軽くすすぎ、バクテリアを残します。
- 底砂は月1回、1/3ずつ区域を分けて軽くクリーニングします。
- シェルターはユニットごとに持ち上げ、転倒の危険がないよう再固定します。
陸地と水場を再現するレイアウト例(半陸生・陸生のカニ対応)
陸地を作る素材と傾斜のつけ方
半陸生や陸生のカニには、泳がずに上がれる緩い傾斜が必須です。厚めに敷いた底砂で浜を作り、プラ板や岩で土留めしながら、浅瀬→陸地へつながる勾配を付けます。コルクバークや合成流木で乾いた休憩場所を用意すると、脱皮や休息が安全になります。
水場と陸地の境界を安全に保つ方法
- 境界には粗めスポンジを敷き、滑り止め兼フィルターとして機能させます。
- 吸水性の高いマットで陸の湿度をキープしつつ、溺水しにくい深さに調整します。
- 脱走防止にフタは必須で、配線の隙間には防虫網を挟みます。
飼育開始前のチェックリストと長く飼うための実践コツ
持ち物チェックリスト(器具・餌・薬品)
- 水槽(20〜30cm以上)、フタ、ライト(低発熱)
- 人工海水の素、比重計(または屈折計)、温度計
- フィルター(外掛け/スポンジ)、エアポンプ、ホース
- 底砂(サンゴ砂/大磯砂)、ライブロック/シェルター
- ヒーター/冷却ファン、タイマー、プロホース
- 餌(しらす・あさり・甲殻類用フード)
- カルキ抜き、バケツ、ピンセット、ネット、予備容器
初月にやること(優先順位付き)
- 人工海水を作り、比重1.023と温度を安定させる(NOAA、三番瀬水槽教室)。
- 底砂・隠れ家を組み、転倒しないかを水だけでテスト。
- 採集個体の持ち帰りと点滴法での水合わせを徹底。
- 1週目は少量給餌と週1の部分換水で様子見。
- 2〜4週目は餌のローテーションとメンテの型を固める。
- 夏冬のピーク前に冷却・加温の準備を完了する(気象庁の水温傾向を参照)。
最後に: 採集地へ戻す放流は、病原拡散の懸念があるため避けるのが無難です。飼育の責任をもって最後まで面倒を見る姿勢が、海のカニ飼育の基本と言えるでしょう。








