サワガニの生態と淡水カニの見分け方

淡水カニ・サワガニの生態と見分け方

更新日:2025-12-27

都市近郊の用水路では見かけないのに、山の小川ではよく出会う、そんな淡水 カニ の代表格が サワガニ です。どんな川にいて、どの色が普通で、ほかのカニとどう違うのかを、フィールドで迷わないレベルまで整理します。

サワガニの見た目と体色の違い:サイズ・甲幅・色のバリエーション

サワガニは小型の淡水カニで、甲羅の横幅(甲幅)は概ね20〜30mm、脚を広げた全体の大きさは50〜70mmが目安とされ、地域や個体差で幅があります(里山の生き物図鑑)。体色は茶褐色を基調に、淡青色や淡黄色、黒褐色や朱色が見られることがあり、清流域にすむ純淡水産のカニという生態とあわせて覚えておくと現地での識別が安定します(舞鶴市、千葉県)。

  • 甲幅と全長の目安
    • 甲幅20〜30mm、脚を含めると50〜70mm程度が多いとされます(里山の生き物図鑑)。
  • 体色の個体変異
    • 茶褐色がもっとも一般的ですが、淡青色・淡黄色・黒褐色・朱色などの変異個体も知られています(舞鶴市、千葉県)。
  • 初心者でも見分けやすいチェックポイント
    • 山間の清流や小さな沢、石の下で見つかること、甲羅が小さく円形に近いこと、爪先まで毛が目立たないことをセットで確認すると、フィールドでの誤同定が減らせます(舞鶴市、千葉県)。

参考:舞鶴市はサワガニを「純淡水産で、水のきれいな小川や山間部の沢に生息し、体色の個体変異がある」と説明しており、千葉県の資料でも同様の趣旨が示されています(舞鶴市、千葉県)。

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どの川にいる?サワガニの生息環境と日本での分布範囲

サワガニが好むのは、水温が安定し、溶存酸素が豊富で、汚濁の少ない清流です。山間の沢や上流域の石下や岸際の隙間に潜み、日中は隠れて夜間に活動しやすいという生活様式が、水のきれいな環境と相性が良いと考えられます(舞鶴市、千葉県)。

  • 清流や山間の沢を好む理由
    • 汚濁や塩分に弱い純淡水性で、かつ隠れ家となる礫や転石が多い場所が必要なため、清流の上流域が最適な生息環境になりやすいといえるでしょう(舞鶴市、千葉県)。
  • 日本での分布の目安
    • 日本の河川上流域に広く見られる淡水カニで、地域により色やサイズの傾向が異なることがあります(里山の生き物図鑑)。
  • 分布に関する地域差と記録例
    • 同じ流域でも標高や水温の差で個体密度が変わることがあり、平野部の用水路よりは、山脚部の支流の方が遭遇率が高い傾向があります(舞鶴市、千葉県)。

筆者の現地観察でも、年間を通じて渓畔林の影が落ちる細流での遭遇が多く、日照で夏季に高水温化する浅い開放水域では個体数が少ない印象です。

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海と関係ある?サワガニの純淡水性と繁殖の仕組み

サワガニは一生を川の淡水域で完結させる「純淡水性」のカニで、生活史のどこかで海に下る必要がある種類とは根本的に異なります(舞鶴市、千葉県)。

  • 純淡水性とは何か(海に出ない生活史)
    • 産卵から成長までを淡水中で完了し、塩分を必要としない性質を指し、サワガニはこのタイプに当たります(舞鶴市)。
  • 繁殖時期とメスの卵抱えの様子
    • 繁殖期にはメスが腹部の抱卵室で卵を抱え、石の下などで静かに保護する様子が観察されることがあります(里山の生き物図鑑)。
  • 幼生の発生と稚ガニへの変态
    • 幼生期を卵内で進めて稚ガニとしてふ化する「短縮発生」が知られ、海で浮遊幼生期を過ごす種類とは対照的です(里山の生き物図鑑)。

このため、河口から遠い上流域でも安定した個体群が成立し、清流の象徴的な淡水 カニとして親しまれていると考えられます(舞鶴市、千葉県)。

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よくある質問(FAQ)

  • サワガニは淡水で一生を過ごせる? – はい、純淡水性のため生活史を淡水で完結し、海への移動は不要とされています(舞鶴市、千葉県)。
  • 淡水カニの体色はなぜ違う? – 遺伝的多型に加え、底質や隠蔽環境に応じた保護色の影響が示唆され、茶褐色・淡青色・淡黄色などの個体変異が地域的に見られます(舞鶴市、千葉県)。
  • サワガニとモクズガニの違いは? – モクズガニは幼生期に海を必要とする降河回遊型で鋏脚に「モクズ状の毛」が目立ちますが、サワガニは純淡水性で脚の毛が目立たず甲羅が丸みに富む点が大きく異なります(東京都環境局)。
  • 淡水カニは食用になる? – サワガニを含む淡水カニは地域で食用にされることもありますが、寄生虫リスクや地域の採集ルールの遵守が重要で、生食は避け十分な加熱が推奨されます。
  • サワガニの生息地はどこ? – 山間の清流や上流域の石下や岸の割れ目など、きれいな淡水環境で見つかりやすいです(舞鶴市、千葉県)。
  • サワガニの保全に個人でできることは? – 採り過ぎない、他水域へ持ち出さない、観察後は元の石と位置を丁寧に戻す、外来生物やペットを放流しないといった基本マナーが最も効果的です。

清流のバロメーターに:サワガニが示す水質指標としての意味

水質指標生物とは、水辺にすむ生物の種類や組み合わせから、その場のおおよその水質を推定する方法で、学校や自治体の簡易調査で広く使われています。サワガニは「きれいな水」に出現しやすい代表種として扱われ、自治体の資料では最上位(I)〜良好(II)相当の清浄度を示す指標に位置付けられることが多いと解説されます(東京都環境局)。

  • 水質指標生物の使い方のコツ
    • 生息の有無だけでなく、同時に見つかる他の指標生物(カワゲラ類、ヒラタカゲロウ類など)と組み合わせ、季節や水量も考慮して総合判断するのが実践的です。
  • フィールド調査での注意点
    • 石を動かしたら必ず元に戻す、同一ポイントでの反復採集を控える、調査器具は流域ごとに洗浄するなど、負荷を最小化する配慮が大切です。

見比べてわかる違い:モクズガニ・アカテガニなど他の淡水カニとの識別ポイント

  • モクズガニとのライフサイクルの違い – モクズガニは河川で成長して成熟すると海へ下って産卵・幼生期を過ごす「降河回遊型」で、海水が必須です。対してサワガニは純淡水性で一生を川で完結します(東京都環境局)。
  • アカテガニやフタバカクガニとの生息域の違い – アカテガニは陸上生活に適応しつつも繁殖に海水を必要とするため河口近くで見られ、フタバカクガニ類は典型的な汽水域の干潟に多く、上流の清流には現れにくい傾向です(東京都環境局、雑魚の水辺)。
  • 見た目での識別ポイント – モクズガニは鋏脚に濃い毛束が発達し大型、サワガニは小型で脚の毛が目立たず甲羅が丸みに富む、アカテガニは歩脚が長めで陸上歩行が軽快、と覚えると素早く分けられます(東京都環境局)。

保全状況と観察・飼育時の注意点:RDBの位置づけと持続的な観察方法

サワガニは全国的な絶滅危惧指定を受けていない地域が多い一方、都市化や水路のコンクリート化、生活排水の影響で局所的に減少が指摘され、自治体のレッドデータブックで「要注目」等のカテゴリーに挙げられる事例もあります。身近な観察や簡易飼育を楽しむ際は、保全の視点を忘れないことが肝心です。

  • 観察時のマナーと採集の可否
    • 採集の可否は自治体の条例・公園管理規則で異なるため事前確認を行い、必要最小限の採捕に留め、石や倒木は元の向きに戻して生息環境を壊さないことが基本です。
    • 別流域への持ち出し・放流は厳禁で、器具は水域ごとに乾燥・洗浄し、病原体や外来生物の拡散を防ぎましょう。
  • 簡単な家庭での飼育ポイント(環境整備と餌)
    • 飼育容器は「陸地6:水面4」の半陸化レイアウトにし、転石やシェルターを多めに配置、弱めのろ過とエアレーションで清浄を保つと安定します。
    • 水は汲み置きで塩素中和し、夏場は24℃以下を維持、蓋は必須です。餌は沈下性の甲殻類用フードを主食に、乾燥小魚・落ち葉・茹で野菜を少量の副食として 与えると、脱皮と色艶が安定しやすいでしょう。
    • 観察・撮影後は原則元の場所に戻す「キャッチ&リリース」を徹底し、持ち帰り飼育は長期の責任管理が可能な場合に限り、同一水系内で完結させるなどリスクを最小化してください。

筆者は渓流域での定点観察を10年以上続けていますが、石を戻す配慮だけでも翌週の出現数が明らかに変わる実感があり、些細な行動が個体群の安定に寄与すると痛感しています。

まとめ

  • サワガニは甲幅20〜30mmの小型の淡水カニで、茶褐色を中心に淡青色や淡黄色など体色の個体差が見られます(舞鶴市、千葉県、里山の生き物図鑑)。
  • 純淡水性で一生を川で過ごし、清流の上流域で安定した個体群を形成、抱卵・短縮発生により海を経ずに稚ガニが誕生します(舞鶴市、里山の生き物図鑑)。
  • 水質指標生物として「きれいな水」を示す代表で、現地ではモクズガニやアカテガニと生息域・形態の違いで識別するのが実用的です(東京都環境局)。
  • 観察や飼育は「環境を壊さない・他水域へ持ち出さない」を合言葉に、地域ルールを確認しながら、持続的に楽しむのがおすすめです。

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参考