初心者向け 自宅でカニの育て方を完全ガイド

自宅でできるカニの育て方完全ガイド

最終更新日:2025-12-28

執筆者:kani-tu編集部 松本(サワガニ・ベンケイガニなど淡水/半陸生カニの飼育歴5年、海水カニの短期飼育と採集経験あり)

目次

自宅でカニを飼う前に知っておきたいことと本記事の読み方

カニ飼育の魅力と難しさ

カニの飼育は、小さな水槽でも始めやすく、脱皮や給餌の様子、夜行性の行動観察など「生き物の営み」を間近で味わえるのが魅力です。一方で、魚よりも脱走リスクが高く、水温・塩分・陸地/水場のバランスなど環境要件がシビアになりやすい点が難所と言えるでしょう。とりわけ「どの種類を選ぶか」「水質と温度管理」「フタの徹底」「水合わせ」は、カニ 育て 方の要諦になります。

筆者はサワガニの単独飼育で長期飼育を重ねつつ、半陸生カニのレイアウト作りや海水カニの短期飼育も経験しており、初心者がつまずきやすいポイントを具体的に解説します。

この後のセクションで得られる具体的な知識一覧

  • 自宅で飼える主なカニの種類と、初心者向き/上級者向きの見極め方
  • 水槽サイズと素材の選び方、陸地・水場・隠れ家のレイアウト実例
  • 淡水/海水それぞれの水質・水温管理の目安と季節対策
  • 雑食性に合った餌の選び方、給餌頻度、カルシウム補給の工夫
  • 採取したカニの持ち帰りと安全な水合わせの手順(法令リスクにも触れます)
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自宅で飼育できるカニの種類とそれぞれの向き不向き(サワガニ・陸生・半陸生・海水カニ)

サワガニの特徴と飼育上のポイント

日本の小河川で見られるサワガニは、淡水飼育が可能で入手性も高く、はじめての一匹に選ばれやすい種類です。水場中心でも飼育でき、陸場を最小限にしてシンプルにスタートできるのが利点でしょう。一説には、水中飼育で長生きしやすいという飼育報告もあり、水温は30℃近くまで耐える例や、水流で酸素を豊富に供給する重要性が述べられています(出典:サワガニは水中飼育こそが長寿命につながる大正解/kazetoge.com)。とはいえ高温はストレス要因になりやすく、25℃前後を上限目安に静かな隠れ家を用意するのが無難です。

陸生・半陸生カニの特徴と必要な環境

ベンケイガニやアカテガニなどの半陸生カニ、陸地中心で生活する陸生カニは、しっかりした陸場と浅めの水場の両方が必要です。湿った砂やソイルに潜る性質があるため、底床は厚めに敷き、流木やシェルターで隠れ家を豊富に作ると落ち着きます。縄張り意識や共食いのリスクがあるため、単独飼育が基本で、複数飼いの場合は隠れ家を多めに用意して衝突を避ける設計を心がけましょう(参考:tropica.jp)。

海水カニの種類と飼育の難易度

イソガニ類など海水域のカニは、人工海水が必須で、水道水のままでは飼育できません。底床には砂や石で隠れ家を作り、餌はしらすやアサリなどをバランスよく与える方法が紹介されています(出典:hugkum.sho.jp)。海水は比重・塩分濃度の維持やろ過が必要で、蒸発による塩分上昇への対応も不可欠です。淡水に比べ管理難度が高いため、初心者は淡水〜半陸生から始め、海水は段階的に挑戦するのがおすすめです。

水槽の選び方とレイアウト例:陸地・水場・隠れ家をどう作るか

用途別の水槽サイズと素材の選び方

  • サワガニの単独飼育:幅30cmクラス(約20L)から始めやすく、ろ過や保温の余裕を確保しやすいサイズです。
  • 半陸生/陸生カニ:底床を厚く敷く都合上、同サイズでも「水量が減る」前提で選び、横幅と奥行きにゆとりのある水槽がおすすめです。
  • 素材:ガラスは傷に強く透明度が安定、アクリルは軽量で保温性が高い傾向があります。脱走対策でしっかり固定できるフタとの相性も考慮しましょう。

陸地と水場のバランスを取るレイアウト例

  • サワガニ(淡水中心):水場8〜9割+陸場1〜2割。石組みや浮島で上陸点を確保。
  • 半陸生:陸場6〜7割+浅い水場3〜4割。スロープや緩い段差で行き来を容易にします。
  • 海水:全水域レイアウトでも、ライブロックや石で「隙間の多い」隠れ家ゾーンを作ると安心します。

底砂・流木・シェルターの配置と隠れ家の作り方

半陸生や陸生では、潜行性や脱皮時の安全確保のために底床を厚め(例:数cm以上、種類や目的によってはさらに厚く)に敷き、流木やココナッツシェルター、割れた素焼き鉢などで視界を遮る隠れ家を多数配置すると安心度が上がります。複数飼育の際は、個体数+αの隠れ家を用意して競合を避けましょう(参考:tropica.jp)。

脱走防止のためのフタや隙間対策

カニは配線の隙間や濾過装置のすき間から容易に脱走します。必ずフタを設置し、チューブやコードの通し穴をスポンジやガラス蓋で塞ぎます。半陸生は陸側の壁面をよじ登ることがあるため、縁までのクリアランスや内壁の素材感にも注意が必要です(出典:tropica.jpの「フタ必須・単独飼育推奨」記述)。

淡水と海水それぞれの水質・水温管理の実践ポイント

淡水カニの適正水温と水質の目安

水温:概ね20〜25℃が目安で、夏場は27℃を超えない工夫、冬場は15℃を下回らない配慮が安心です。種類により許容範囲は異なるため、入手元の飼育情報を優先しましょう。

水質:pHは弱酸性〜中性(おおむね6.5〜7.5)で安定させ、アンモニア/亜硝酸はゼロを目標に硝化ろ過を回します。水道水の塩素は必ず中和剤で処理するか、汲み置きで飛ばしてから使用します。

海水カニの人工海水の作り方と水道水の扱い

人工海水:海水用合成塩をRO水またはカルキ抜きした水に溶かし、比重1.023±0.002(25℃)を目安に調整します。海水は蒸発で塩分が上がるため、真水での足し水と、定期的な比重測定が必須です。

水道水:海水カニに水道水そのままは不可とされ、必ず人工海水を用意するのが基本とされます(出典:hugkum.sho.jp)。

温度管理の具体策(夏・冬の対処)

:直射日光を避け、ファンや冷却器で27℃以下をキープ。凍らせたペットボトルを短時間で使う場合は急激な温度変化を避け、温度計でこまめに監視します。

:パネルヒーターや小型ヒーターで緩やかに加温し、就寝時の急低下を防ぐため断熱マットや発泡シートを併用すると安定します。

よくある質問(FAQ)

Q1. サワガニは陸地なしで飼育できる?

A. 水中飼育で長期飼育できるという飼育報告があり、水流による酸素供給が重要とされています(参考:kazetoge.com)。ただし個体差や環境差があるため、上陸点を小さくでも用意して様子を見ると安心でしょう。

Q2. 海水カニに水道水は使える?

A. そのままは使えません。人工海水の作成が基本で、比重管理と塩分維持が重要です(参考:hugkum.sho.jp)。

Q3. カニの水温は何度まで大丈夫?

A. 種により異なりますが、家庭飼育では20〜25℃帯で安定させるとトラブルが少ない印象です。高温側では代謝が上がり酸欠や脱皮不全のリスクが増すため、夏は冷却対策を優先しましょう。

Q4. カニは何匹まで一緒に飼える?

A. 基本は単独飼育がおすすめです。複数飼育は縄張りや共食いのリスクがあり、隠れ家を多く配置しても争いが起きる場合があります(参考:tropica.jp)。

Q5. カニの餌は何がおすすめ?

A. 雑食性を踏まえ、甲殻類用/ザリガニ用人工飼料が扱いやすく、カルシウム配合で栄養バランスをとりやすいと紹介されています(出典:t-aquagarden.com)。

餌の選び方と給餌方法、日常の水換え・メンテナンスのやり方

おすすめの餌(人工飼料・生餌)と与え方

基本:甲殻類用またはザリガニ用の人工飼料は、水中で崩れにくく栄養設計が安定しておりおすすめです(出典:t-aquagarden.com)。

– バリエーション:冷凍アカムシ、乾燥エビ、ボイルしたしらす/アサリ(海水系)などを少量。野菜(小松菜やほうれん草を湯通し)も嗜好性の確認をしつつ与えます。

– 量と頻度:1日おき〜週3回程度、食べ切る量を5〜10分で回収できる程度が目安です。残餌は水質悪化の原因になるため必ず取り除きます。

カルシウム補給や栄養バランスの整え方

脱皮や甲羅の硬化にはカルシウムが欠かせません。カトルボーン(イカの甲)や貝殻の破片、カルシウム配合の人工飼料を活用し、偏食を避けるため主食+副食(動物質/植物質)をローテーションします(参考:t-aquagarden.com)。

日常の水換え頻度と分量・プロの掃除方法

部分換水:1回あたり全体の20〜30%を、週1回を目安に実施。底面の残餌・糞はスポイトやプロホースで回収します。

フィルター:ろ材は飼育水で軽くすすぎ、生物ろ過バクテリアを温存します。

海水:比重を合わせた新しい人工海水を用意し、温度合わせも同時に行います。

ガラス面:コケ取りはマグネットクリーナーやスクレーパーを使い、脱走されないようフタの開放時間を最小限にします。

野外採取したカニの持ち帰り方と安全な水合わせの手順

採取時の注意点(漁業法・毒・寄生虫・捕獲時の扱い)

地域によっては採捕が禁止・制限されている区画や期間、サイズ規制があるため、出向く前に各都道府県の漁業調整規則や保護区のルールを確認してください。生態系保全の観点から、外来種の放流や無秩序な移送は「外来生物法」などの趣旨にも反するため避けるべきとされています(出典:環境省 外来生物法)。また、野外個体には寄生虫や病原体が付着している可能性があり、家庭水槽に持ち込む際は他生体と混ぜず、観察期間を設けると安全です。素手での掴み取りは怪我の恐れがあるため、小型タモやプラ容器でゆっくり追い込む方法が無難です。

持ち帰り用容器と輸送時の工夫

浅い水と大きめの空気層を確保できるクーラーボックスや通気孔のあるプラケースを使用し、直射日光を避けて温度上昇を防ぎます。半陸生は湿ったキッチンペーパーや苔を敷き、転倒防止の足場を入れると衝撃が和らぎます。移動時間が長い場合は小型の保冷剤を布で包んで温度を緩やかに下げ、急冷にならないよう注意しましょう。

水合わせの具体的手順(段階的な混和)

  1. 採取時の水ごと個体を隔離容器に入れ、照明を落として落ち着かせます。
  2. 滴下法:エアチューブで飼育水を毎分1〜2滴から開始し、30〜60分かけて2〜3倍量まで段階的に混和します。
  3. 比重/温度合わせ:海水は比重、淡水も温度差に注意し、最終的に飼育水に近づけます。
  4. 移送:網で個体のみを新環境に移し、輸送水は入れないようにします。
  5. 24〜48時間は給餌を控え、隠れ家の多い明るさ控えめの環境で静養させます。

まとめ:家庭で失敗しないカニの育て方の要点

  • 種に合った環境設計(淡水/半陸生/海水、陸地と水場の配分、隠れ家の数)を最初に固めます。
  • 脱走対策はフタと隙間塞ぎが最優先。単独飼育を基本に、複数は隠れ家過多で衝突回避。
  • 水質・温度は「ゆっくり変えて、狭い範囲で安定」させるのがコツ。海水は人工海水と比重管理が必須です。
  • 給餌は少量多頻度、残餌除去と定期換水で清潔を維持。カルシウム補給で脱皮不全を予防します。
  • 採取個体は法令・地域ルールを順守し、水合わせは滴下法で慎重に、輸送水は持ち込まないのが鉄則です。

小さな工夫の積み重ねが、カニの健康と長期飼育につながります。まずは管理しやすい種とシンプルな設備から始め、観察を通じて最適化していきましょう。

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