川で見かけるカニの種類と見分け方
最終更新日:2025-12-27
執筆者:kani-tu.com 川と干潟の観察班(観察歴10年、都市河川の市民調査に継続参加し、河口干潟でのカニ類観察記録と簡易飼育の実践知を保有)
目次
川でカニを見かけたらまず知りたい:種類と見分け方が一目でわかるガイド
川や河口で見かけたカニの種類を知りたい方に向け、代表種の識別ポイントと生息域の違い、観察や飼育の基礎をコンパクトに整理します。
- この記事でわかること
淡水域と汽水域の違い、上流〜河口で出会いやすいカニの種類、見分け方の要点、観察と簡易飼育のコツを、初めての方にも実践しやすい形でまとめます。 - 川と河口で見られる代表的なカニの一例
サワガニ(淡水域)、モクズガニ(中下流〜遡上・降下)、アカテガニ(河口周辺)、クロベンケイガニ(汽水域の代表)などが挙げられます。河口干潟は特に多様で、福岡市の多々良川河口では20種以上が記録され、ヨシ原や塩生植物帯が餌場と隠れ家になっています。

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淡水性カニと汽水性カニは何が違う?生息域と見分け方
淡水域は降雨や湧水の影響が強く塩分がほぼゼロで、汽水域は海水と淡水が混ざるため塩分が変動し、カニの顔ぶれや活動時間帯、巣穴の作り方に差が生じます。
淡水に一生を送るサワガニの特徴
サワガニは甲幅2〜3cmほどの小型で、日本固有の淡水性カニとして清流の上・中流に生息し、一生を淡水で過ごすことが知られています。石の下や水際の陰でじっとしていることが多く、透明感のある流れで出会いやすいでしょう。
河口や汽水域で見られるカニの特徴(体色・巣穴・活動習性)
汽水性のカニは干潟やヨシ原に巣穴を掘り、潮位に合わせて行動する傾向があり、体色は泥質に溶け込む黒っぽい種類も目立ちます。クロベンケイガニは全身が黒色で甲に小さなコブがあり、河口のヨシ原に巣穴をつくって暮らします。
観察時の簡単な見分けポイント
- 出会った場所で仮説を立てる
上流の冷たく澄んだ水域ならサワガニの可能性が高く、河口の干潟やヨシ原ならクロベンケイガニやアカテガニ類に目星をつけやすいです。 - 姿とふるまいで補強する
甲幅が小さく清流の石下でじっとするなら淡水性の可能性が高く、巣穴や干潮時の地表活動が目立つなら汽水性の可能性が高いと考えられます。

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川や河口でよく見かける代表種の特徴と生息場所(サワガニ・モクズガニ・アカテガニ・クロベンケイガニ)
サワガニ:小型で清流にすむ淡水性のカニ
上流〜中流の冷涼で酸素の豊富な渓流に多く、甲幅2〜3cm程度の小型で、石の下や岸沿いの陰を好みます。体色は地域差があり、薄褐色〜赤みを帯びた個体まで幅があります。
モクズガニ:河川の中下流を移動する甲幅が大きめの種
中流〜下流で見られ、成長すると甲幅が大きくなり、はさみ脚に“藻屑のような毛”が密生するのが特徴です。産卵期に海へ降り、成長段階で川を遡上・降下する生活史が知られています。
アカテガニ:河口付近や干潟で見られる(特徴と生息例)
脚が赤みを帯び、陸上活動が比較的活発で、河口近くの護岸の隙間やヨシ原周辺で見かけることがあります。降雨後や大潮前後に地表での活動が増える傾向が見られます。
クロベンケイガニ:黒っぽく巣穴を掘る汽水域の代表
全身が黒っぽく光沢を帯び、泥質干潟やヨシ原に深い巣穴を掘って暮らすのが典型です。干潮時に巣口の周辺で採餌し、満潮時や危険時には素早く巣に戻ります。

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河口干潟やヨシ原はなぜカニにとって大切か:生態系の役割と観察のヒント
ヨシ原や塩生植物帯は落葉や付着微生物が豊富で、カニにとって餌と隠れ家を同時に提供し、捕食者から身を守りつつ効率よく採餌できる場になります。
干潟は泥質・砂質・礫質など微地形が入り交じり、潮位と塩分勾配が種ごとの棲み分けを生みます。上流側の塩分が低い帯では淡水性に近い種が、河口寄りの高塩分帯では典型的な汽水性のカニが優占しやすいです。
地域ごとの分布例:名古屋・多摩川・千葉で報告されているカニ
名古屋市に記録されるカニ類(調査報告の抜粋)
名古屋市のレッドデータブックでは、清流域のサワガニが淡水性の代表として整理され、地域の保全指針の文脈で生息環境が解説されています。
多摩川河口での観察記録
多摩川河口干潟では、クロベンケイガニのような汽水性カニがヨシ原に巣穴を作り、潮汐に合わせて活動する様子が公的資料で紹介されています。
千葉県・地元調査での生息一覧
千葉県沿岸の干潟や河口域でも多様なカニが報告されており、地域のNPOや自治体・博物館の公開資料が観察スポット選びの良い指針になります。各自治体の環境学習・自然観察ページを事前に確認すると効率的です。
よくある質問(FAQ)
- 川の上流に生息するカニは? 清流の石下などに潜むサワガニが代表的で、淡水で一生を過ごす点が最大の特徴です。
- モクズガニとサワガニの違いは? モクズガニははさみ脚に毛が密生し中下流〜河口を移動し、サワガニは小型で上流の清流に定住する傾向が強い点が異なります。
- 河口でよく見られるカニの種類は? クロベンケイガニやアカテガニ類など汽水性の種が多く、干潟やヨシ原の巣穴周辺で活動が見られます。
- カニの生息環境としてヨシ原の役割は? 落葉や付着藻類などの餌資源と隠れ家を同時に提供し、潮汐に合わせた活動に適した場を形成します。
- 淡水カニと汽水カニの見分け方は? 出会った場所の塩分環境と、巣穴の有無や活動タイミングを手掛かりにし、体色やはさみの毛の有無など形態を併せて判断すると精度が上がります。
川での見つけ方と家庭での簡単な飼育方法(準備・餌・管理)
観察時の道具と安全な見つけ方(場所・時間・マナー)
基本装備
滑りにくい靴、軍手、小型タモ網、虫かご、ヘッドライト(夕暮れ観察用)を用意します。
見つけ方のコツ
上流では石をゆっくり持ち上げて裏面を確認し、元に戻すのがマナーです。河口干潟では干潮1〜2時間前後が狙い目で、巣穴前の足跡や泥の団子に注目しましょう。
水槽の準備:水質・底材・隠れ家の作り方
環境づくりとして、淡水性のサワガニは清潔な淡水と石組みの陸地、汽水性の種は0.5〜1.5%程度の塩分を再現し、砂泥とシェルターを用意します。甲幅の大きいモクズガニは脱走防止のフタが必須で、水位は浅め、上陸面を確保すると安定します。
餌と日常管理の基本(給餌・水換えの目安)
給餌
雑食性が多く、ゆで野菜、小魚やエビの乾燥餌、沈下性ペレットを少量ずつ与え、食べ残しは速やかに除去します。
水換え
汚れや匂いが出る前に部分換水を行い、汽水飼育では塩分を都度合わせます。モクズガニは中下流域に生息し川を遡上・降下し、甲幅7〜8cmに達するため、ろ過と掃除を丁寧に行うと安定しやすいです。
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採集や観察で気を付けること:生息地保全とルール・衛生面の注意
採集や観察は地域のルール順守が大前提で、立ち入りや採集の可否は自治体や管理者の掲示を確認し、禁止区域では観察のみとします。
ヨシ原や干潟では踏み荒らしを避け、巣穴を崩さない歩き方を意識し、石や流木は元の向きと位置に戻します。器具や靴は場所間で洗浄し、外来生物や病原体の持ち込み・持ち出しを防ぎましょう。
飼育個体の野外放流は、同一河川であっても病原体・遺伝的攪乱のリスクがあるため推奨されません。飼育が難しい場合は採集せず、観察と記録に留めるのが安全です。
川のカニを学ぶための要点まとめと次の観察ステップ
- 重要ポイントの振り返り
川のカニの種類は生息域の塩分と地形で大きく分かれ、上流はサワガニ、河口の干潟・ヨシ原はクロベンケイガニやアカテガニ、河川を行き来するモクズガニは中下流で遭遇しやすいと言えるでしょう。 - 次に試す観察スポットと参考資料
まずは自宅近くの上流域の清流と、河口の干潟・ヨシ原を干潮前後に歩き、同じ川の「淡水域と汽水域の違い」を体感してみてください。地域の公的資料やNPOの報告は事前学習に有効で、多摩川・名古屋市の公開情報は良いモデルになります。








