カニについて:種類・分布・選び方ガイド
最終更新日:2025-12-29
執笔:kani-tu.com編集部 水産ライター・山本健太(市場仕入れ歴10年/産地取材多数)
海の幸の定番「カニについて」知りたい方へ。種類や分布、生息環境から食べ方・選び方まで、要点をやさしく整理します。
目次
カニとは?主な種類と見分け方
カニの基本的な特徴(甲殻類としての位置づけ)
カニは甲殻類で、硬い甲羅と歩脚、はさみ脚を持つのが特徴です。淡水や汽水、浅い沿岸から深海、さらには洞窟まで幅広く生息します。河口の干潟やヨシ原は産卵や稚ガニの成育に重要と報告されています(鹿児島大学総合研究博物館)。
なお、タラバガニはヤドカリに近縁の「異尾類」で、いわゆる“真ガニ”とは系統が異なります。食用としては同様に扱われますが、分類学上は別系統と言えるでしょう。
日本でよく知られる主な種類(ズワイガニ・タラバガニ・ワタリガニなど)
- ズワイガニ(本ズワイ/オスは松葉・越前などの地域名): 身が繊細で甘みが特徴です。
- ベニズワイガニ: 深場の代表格で、水分が多く甘みのある身が特徴です。
- タラバガニ: 太い脚で食べごたえがあり、ボイルや焼きに向きます。
- ケガニ: 濃厚なカニ味噌が魅力で、身にも旨みがあります。
- ワタリガニ(ガザミ): 旬のメスは内子が人気で、味噌汁や蒸し物に合います。
種類ごとの見た目の違いと簡単な見分け方
- ズワイガニ: 細長い脚と三角形の額棘、甲はやや扁平です。
- ベニズワイガニ: 全体に赤みが強く、脚はやや細めです。
- タラバガニ: 表面にトゲが多く、見える歩脚は4対で“8本”に見えます。
- ケガニ: 甲羅や脚に細かな毛が密生します。
- ワタリガニ: 後脚が櫂状で遊泳に適応し、甲は横に広い形です。
これらの見分けは市場や通販の写真でも確認しやすいポイントです。産卵や成育環境として干潟・ヨシ原が重要という知見は、沿岸性の種類理解の助けになります(鹿児島大学総合研究博物館)。

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カニの分布:日本国内と世界の主な生息域
世界での分布概況(東シナ海・南シナ海など)
カニ類は広く世界の海に分布します。東アジアでは東シナ海や南シナ海に多くみられます。水深30〜100mの砂地・砂泥底に多いという知見が示されています(名古屋市の資料)。
日本国内での分布域(北海道〜九州までの広がり)
日本では北海道から九州まで、内湾から外洋沿岸にかけて多様な種類が見られます。東京湾から九州沿岸にかけても分布が確認される種が知られています(名古屋市の資料)。
地域ごとの代表的な生息水深と底質
多くの沿岸性の種は、砂地や砂泥底の30〜100m帯に多い傾向が示されています。内湾の浅場や河口の砂泥底でもカニ類は豊富です(名古屋市の資料)。

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生息環境の実態:水深・底質・河口や干潟での暮らし
水深別の生息域と底質(砂地・砂泥底など)
干潟に代表される砂泥底は、カニ類の重要な生活空間です。底質が柔らかく、餌資源や隠れ場が多いことが理由です(広島大学 竹原ステーション)。
河口・干潟・ヨシ原が産卵・成育に重要な理由
河口域の干潟やヨシ原は、稚ガニの生育場として機能します。植生が捕食圧を和らげ、餌が豊富である点が利点です(広島大学 竹原ステーション)。ヨシ原や干潟の重要性は、公的機関の報告でも繰り返し示されています(鹿児島大学総合研究博物館)。
浅海〜深海〜陸域までの適応例(生活史の多様性)
浅い干潟に適応したワタリガニ類、深場に生息するベニズワイ、内陸の淡水や洞窟にも適応する群など、多様な生活史が見られます。深海や洞窟まで生息域が及ぶ例も報告されています(鹿児島大学総合研究博物館/広島大学 竹原ステーション)。
日本の主要産地と漁獲の特徴(地域別ガイド)
北海道〜東北の代表的な産地と代表種
北海道ではケガニ、タラバガニが広く知られます。日本海側ではズワイガニが重要資源で、分布や回遊の研究が進んでいます(京都府の資料)。東北太平洋側ではワタリガニ類が各地で水揚げされます。
本州〜四国〜九州の主要産地(静岡・愛知・和歌山・高知など)
東京湾や伊勢湾・三河湾(愛知)ではワタリガニ類の漁が行われます。静岡の沿岸、和歌山〜高知の太平洋側でも各種カニが水揚げされます。北海道から九州まで広く分布することが示唆されています(京都府の資料)。
産地ごとの漁期や漁法の違い(概略)
- 漁期: 地域ごとに禁漁期と解禁日が設定され、資源管理が行われます。
- 漁法: ズワイガニは底びき網が中心で、ワタリガニはかご漁や刺し網も使われます。
- 鮮度: 活ガニや船上冷凍の導入で、品質の平準化が進んでいます。
ズワイの分布・移動に関する知見は、資源管理や漁期設計の根拠となっています(京都府の資料)。

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生態から見るカニの特徴:産卵・成育・行動パターン
産卵場所と繁殖周期の一般的傾向
多くの雌は腹部で卵を抱え、沿岸の安定した環境で産卵・保卵します。繁殖期は種と地域で異なり、水温と栄養環境が影響すると考えられます。
稚仔の生育と成長過程(稚仔期の生息場所)
ふ化後はプランクトン期(ゾエア、メガロパ)を経て稚ガニになります。干潟や藻場は、餌と隠れ場が揃う育成場として機能しやすいと考えられます。
移動・越冬・捕食行動の特徴
季節で水深を移動する種や、夜間に摂餌を活発化させる種が知られます。越冬は低温安定帯で活動を抑える例が多いとされます。
食用カニの種類・選び方とさばき方の基本手順
食用によく使われるカニ一覧と味の特徴
- ズワイガニ: 繊細で上品な甘み。カニすきや刺しで活きます。
- タラバガニ: 肉厚で豪快な食感。焼き・ボイルが定番です。
- ケガニ: 味噌の濃厚さが魅力。甲羅盛りがおすすめです。
- ワタリガニ: 出汁が濃い。味噌汁や韓国風蒸し料理に適します。
カニは淡水・汽水・沿岸から深海まで幅広く生息し、環境の違いが身質にも影響すると語られます(Wikipedia「カニ」)。
購入時の選び方(鮮度の見分け方)
- 活ガニ: 甲羅を持つと脚を強く動かし、重みを感じる個体が良品です。
- ボイル: 甲羅が硬く締まり、持つとずっしり重い個体を選びます。
- 甲羅裏: 黒ずみや強い異臭は避けましょう。腹部がへこんだ痩せ個体も避けます。
- 表示: 産地、加工地、冷凍・解凍の別を確認しましょう。
家庭での基本的なさばき方(下処理〜茹で方)
- 下準備: 甲羅や脚の汚れをブラシで洗い、腹を上にして動きを安定させます。
- 固定: まな板に脚を広げ、包丁を入れる位置を確認します。
- 甲羅外し: 腹のふんどしを外し、甲羅を手前に倒して外します。
- そうじ: エラ(ガニ)を外し、内臓を整えます。味噌は別に保管します。
- カット: 関節ごとに脚を分け、食べやすい長さに切ります。
- 茹で: 海水程度の塩分(3〜3.5%)で、再沸騰後に計時します。中〜大型は10〜20分が目安です。
- 冷却: 風乾して余熱を抜き、旨みを落ち着かせます。
保存・解凍・調理時の注意点
- 冷蔵: 茹でガニはラップ+密閉で1〜2日を目安に早めに消費します。
- 冷凍: 急冷して空気を遮断し、1カ月程度を目安に使い切ります。
- 解凍: 低温でじっくり。ドリップを受けて旨み流出を防ぎます。
- 再凍結: 食感が劣化するため避けるのが無難です。
Q&A
カニに関するよくある疑問と簡潔な回答
- Q: カニはどこに生息する?
- A: 沿岸の砂地・砂泥底の30〜100m帯や、干潟・河口域に多い種類がいます。淡水から深海、洞窟まで幅広い適応も知られます(名古屋市/鹿児島大学)。
- Q: 日本のカニの主な産地は?
- A: 北海道のケガニ・タラバ、山陰〜北陸のズワイ、東京湾・伊勢湾・三河湾などのワタリガニが代表です(京都府の資料)。
- Q: カニの種類は何がある?
- A: ズワイ、ベニズワイ、タラバ、ケガニ、ワタリガニなどが流通の中心です。見た目と脚の数・形で見分けられます。
- Q: カニの生息水深は?
- A: 種によりますが、30〜100mの砂地・砂泥底に多いとされます(名古屋市)。干潟の浅場でも多く見られます(広島大学)。
- Q: この記事の更新日と筆者情報は?
- A: 最終更新日は2025-12-29です。筆者はkani-tu.com編集部の山本健太です。市場仕入れ歴10年で、北海道や山陰の産地取材経験があります。
最後に:カニについて押さえておきたいポイントと次の行動
この記事の要点まとめ
- カニは淡水〜深海まで多様な環境に適応し、干潟・ヨシ原は育成場として重要です。
- 日本では北海道〜九州まで広く分布し、ズワイ・ケガニ・ワタリなどが主要流通種です。
- 選ぶなら「重い・身入り良好・表示明確」を重視し、低温解凍と適正塩分で丁寧に調理しましょう。
さらに調べるべき公的資料や参考リンク
- 分布や底質、水深の基礎は地方自治体や大学の公開資料が有用です。
- ズワイの資源管理は各府県の海洋センター情報が参考になります。
観察・購入時の具体的な次のステップ
- 産地の禁漁・解禁期を確認し、旬の個体を選びましょう。
- 通販では活・ボイル・冷凍の違いと加工地を確認し、用途に合わせて選定します。
- 解凍は冷蔵庫でゆっくり。再凍結は避け、旨みを守りましょう。
監修メモ(筆者の現場知見)
冬の山陰港でのセリでは、同じサイズでも重い個体に高値がつきます。重さと甲羅の硬さは、身入りの実用的指標として有効でした。
参考
- 名古屋市「カニ類」 – 名古屋市「カニ類」
- 広島大学 竹原ステーション「干潟の生物」 – 干潟の生物
- 京都府「ズワイガニ 分布と移動(応用編)」 – ズワイガニ 分布と移動(応用編)
- 鹿児島大学総合研究博物館 ニュースレターNo.39 – ニュースレターNo.39
- Wikipedia「カニ」 – Wikipedia「カニ」







