カニの幼生の成長段階と観察ガイド
目次
カニの幼生とは?親とまったく異なる姿の特徴と理由
カニの幼生は、ふ化直後から親ガニとは別形態で育つ「変態型の生き方」が特徴です。一般に、プレゾエア→ゾエア→メガロパ→稚ガニへと姿を変え、最後に親に近い体型へ落ち着きます(国立科学博物館、越前がにの百科事典)。とくにゾエア期は長い棘と大きな複眼、泳ぐための胸脚を備え、底で歩く親ガニと見た目も機能も大きく異なります(国立科学博物館)。
なぜ形が違うのかというと、初期は「プランクトン期」に当たり、海中を漂いながら成長するためです。浮遊生活に適した軽くて扱いやすい体、捕食者から身を守る棘、微小餌を効率よく食べる口器が有利に働くと考えられます。底生生活に移る直前のメガロパで歩脚などが発達し、以降は底で暮らす稚ガニへと変わります(国立科学博物館/越前がにの百科事典)。
引用のポイント:
- プレゾエア(約3mm)→ゾエア1期→ゾエア2期→メガロパ→稚ガニ(国立科学博物館・越前がにの百科事典)

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ふ化後の成長段階を段階別に解説(プレゾエア→ゾエア→メガロパ→稚ガニ)
京都府の資料によれば、ズワイガニではふ化後にプレゾエア、第I期ゾエア、第II期ゾエア、メガロパを経て、おおよそ約3ヶ月で稚ガニになります(京都府)。
プレゾエア期の特徴と大きさ
ふ化直後の一時的段階で、全長はおよそ数ミリ規模です。国立科学博物館が示す代表例では約3mm前後とされます(国立科学博物館)。
殻が薄く、外洋へ出る前に短時間で第I期ゾエアへ移行するのが一般的です。
ゾエア期(第I期・第II期)の違いと行動
第I期ゾエアは長い棘と大きな複眼が目立ち、能動的に遊泳します。第II期では体がやや大型化し、口器や胸脚の機能が向上します。
いずれも「カニ 幼生」の代表的な浮遊段階で、微小なプランクトンを主に摂食すると考えられます。
メガロパ期から稚ガニへの変態と期間の目安
メガロパは「エビのように泳ぎ、カニのように歩く」移行形で、底生生活へ適応する器官が育ちます。
全過程はおよそ3ヶ月が目安で、ここを越えると稚ガニとなり、底での生活が主体になります(京都府)。
引用のポイント:
- 約3ヶ月で稚ガニに到達(京都府)
- プレゾエア〜メガロパの順序とサイズ感(国立科学博物館)

プランクトン期の浮遊生活:餌・捕食者・水深を変える移動の実態
ゾエア期の幼生は海中を浮遊するプランクトン生活者で、食物連鎖では小型捕食者にとって重要な餌にもなります。成長に伴い、より深い層へ移動し、やがて海底へと向かいます。資料では、浮遊期を経て徐々に水深を深め、最終的に200〜400mの海底域へ達する例が紹介されています(沖縄県の解説)。
この移行には、餌の分布や捕食リスク、潮流の影響が関与します。浅場では餌が豊富な反面、捕食者も多く、成長とともに深場へ退避し、底生生活へのスイッチを切るタイミングを探る戦略があると考えられます。
引用のポイント:
- 浮遊期から200〜400mの海底へ移行(沖縄県)

脱皮による成長の仕組みと環境要因(水温・塩分)が与える影響
カニの成長は「脱皮」によって段階的に進みます。幼生は各ステージの境目で脱皮し、体サイズや器官の機能を更新します。発育速度や生存には環境要因が大きく、ズワイガニ幼生では水温と塩分が生存率や発育日数に顕著な影響を及ぼすことが報告されています(水産研究・教育機構)。また、メス1尾から約5万尾もの幼生がふ化しますが、環境条件次第で多くが淘汰されます(同機構)。
実務面では、適正な水温・塩分域から外れると発育が遅延したり、生残率が下がる傾向が示されています。野外の年変動や黒潮・親潮の勢力、沿岸の低塩分水の影響が、加入量の増減に跳ね返る一因といえるでしょう。
引用のポイント:
- 水温・塩分が生存と発育日数に影響、雌1尾で約5万尾ふ化(水産研究・教育機構)
よくある質問(FAQ):カニの幼生
Q. カニの幼生は何種類の段階がありますか?
A. 一般的にプレゾエア→ゾエア(第I・第IIなど)→メガロパ→稚ガニの順です(国立科学博物館、京都府)。
Q. カニの幼生は親とどう違いますか?
A. ゾエア期は長い棘と大きな複眼、泳ぐための脚が発達し、底で歩く親とは形態も機能も異なります(国立科学博物館)。
Q. カニの幼生はどれくらい浮遊生活をしますか?
A. ふ化からメガロパを経て稚ガニになるまでの目安は約3ヶ月で、この間が主な浮遊期です(京都府)。
Q. ズワイガニの幼生の成長過程は?
A. プレゾエア→ゾエアI→ゾエアII→メガロパを経て、約3ヶ月で稚ガニになります(京都府)。
Q. カニの幼生を観察する準備は?
A. プランクトンネットやルーペ・実体顕微鏡、小型水槽、海水、弱いエアレーションがあると観察しやすいです(観察・飼育の基本は後述)。
種別で見る幼生の違い:ズワイガニや越前ガニの特徴と生存戦略
- ズワイガニ(越前ガニはその地域ブランド)は、外洋性でステージを踏んで変態し、加入年級の良し悪しが環境条件に大きく左右されます。高い産卵数に対し初期致死が多く、量で補う戦略が示唆されます。
- 地域個体群では、水塊構造や栄養塩、沿岸の低塩分水の入り込み方が幼生の分散と生残に影響し、漁期の資源量変動につながります。
- 資源管理では、親ガニの保護や産卵期の操業管理、環境モニタリングを組み合わせ、幼生期の生残を下支えする発想が重要でしょう。
カニの幼生を観察・飼育する方法と安全に行うための注意点
観察に必要な道具と採集の基本手順
- プランクトンネット(または目の細かい自作ネット)
- 透明容器・小型水槽、スポイト、白いトレイ
- ルーペや実体顕微鏡、スマホ撮影用クリップレンズ
- 海水(現地採水または人工海水)
基本手順
1) 岸壁や防波堤で表層〜中層を水平・斜め曳きして採集。
2) 受けた試水を白トレイに移し、動く個体をスポイトで回収。
3) ルーペでゾエアやメガロパの形態を観察し、必要に応じて撮影。
4) 短期飼育は小型容器に移し、弱いエアレーションで水質を維持。
飼育の基本(水質管理・餌・脱皮への配慮)とよくあるトラブル対処
水質と環境
– 比重は海水域に合わせ、急変を避けます。水温は現地±1〜2℃以内を目安に。
– エアは弱めにし、渦流で個体が壁に当たらないようにします。
給餌
– 短期観察なら無給餌でも可。長めに見る場合は海産微細藻類や微小動物プランクトン(例:ワムシ)を少量頻回で。
脱皮とトラブル
– 脱皮直後は殻が柔らかく事故死が増えがち。水換えは少量・点滴式で。
– 共食い予防に広めの容器と隠れ場(メガロパ期)を用意します。
法令・倫理
– 採集は各自治体・施設のルールを確認。保護区・港湾施設の禁止事項に注意。
– 外来リスク回避のため、持ち帰り個体は採集場所以外へ放流しないのが原則です。
編集部の実地観察・取材からのポイント:
– 微細な気泡でも身体に付くと体力を奪います。散気石は超微細泡を避け、吐出口は側面に。
– 水換えは「少量・高頻度」が安定しやすいです。
知っておきたい要点まとめ:カニ幼生の成長と観察のポイント
- カニの幼生は親と姿が大きく異なり、プレゾエア→ゾエア→メガロパ→稚ガニへ変態します(国立科学博物館)。
- ズワイガニでは約3ヶ月で稚ガニとなるのが目安です(京都府)。
- 浮遊期は餌・捕食・潮流の影響を受け、成長とともに深場・海底へ移ります(沖縄県)。
- 水温・塩分は生存と発育日数を左右し、資源変動の鍵です(水産研究・教育機構)。
- 観察は「水質の急変回避・弱い通気・少量頻回のケア」がコツです。
更新日: 2025-12-28
筆者: kani-tu.com編集部(海産生物担当)
執筆ポリシー: 公的機関の資料を参照し、沿岸観察の取材・実地検証で得た知見を反映しています。








