海で採れたカニの飼い方を徹底解説

海で採ったカニの飼い方完全ガイド

最終更新: 2026-01-01

執筆: kani-tu.com 海の甲殻類担当ライター(磯採集歴10年)

海で見つけた小さなカニを自宅で飼うなら、まず「何の種類か」「海水の準備」「水温と水質管理」「単独飼育か」を押さえると失敗が減ります。筆者は日本の磯ガニ類や半陸生ガザミ幼体の飼育を複数回経験しており、脱走や共食い、水質悪化で苦い思いもしてきました。この記事ではその実体験と専門情報をもとに、海のカニの飼い方の要点を順に解説します。

目次

海で採ったカニを自宅で飼う前に知っておくべきポイント

飼育で期待できることと代表的な難点

  • 観察の楽しみ: 脱皮や餌取り、縄張り行動など、甲殻類ならではの行動観察ができます。
  • 難点の例: 海水の準備が必須、比重や水温の管理負担、縄張りや共食いリスク、脱走対策の必要性が挙げられます。
  • 法令・マナー: 採取は地域の条例・漁業権・保護種規定を必ず確認し、必要以上に持ち帰らないことが大切です。

自宅飼育に向くカニの特徴

  • 小型で丈夫、汽水にも耐える種類はビギナー向きです。
  • 半陸生で空気呼吸が得意な種は水深を浅めにでき管理が楽な場合があります。
  • 反対に大型・純海水依存・高水温/低水温を厳密に要する種は難度が上がります。
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海生・半陸生・淡水系――カニの種類と飼育で変わるポイント

海生カニと半陸生カニの見分け方

  • 海生タイプ: 常に海水中で活動し、比重の安定が重要です。甲羅が滑らかで遊泳・歩行が活発な傾向があります。
  • 半陸生タイプ: 砂泥や岩場で陸にもよく上がります。水場と陸場の両方を設けると落ち着きます。
  • 淡水系(参考): 川や汽水域の種で、海で採った個体とは前提が異なるため混同しないことが肝心です。

細類ごとに変わる必要設備と難易度

  • 海生: 人工海水、比重計、強めのろ過、しっかりしたフタが基本で、難易度は中〜上級です。
  • 半陸生: 陸場・隠れ家・浅い水深・湿度管理が肝で、難易度は中程度です。
  • 共通: 脱走防止のフタ、隠れ家、定期的な水換え、単独飼育が基本装備と考えると安心です。
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人工海水の作り方と海水準備での注意点

人工海水の比重(比重計の使い方)と調整手順

  1. 比重の目安: 一般的な海水の塩分は約3.4%で、家庭水槽では比重1.022〜1.026(25℃前後)が目安と言われます。参照情報として気象庁の資料を参照します。
  2. 手順
    1. 容器にカルキ抜き済みの水(可能ならRO水)を用意します。
    2. メーカー規定量の人工海水の素を溶かし、完全に攪拌して溶解させます。
    3. 水温を25℃前後に合わせ、比重計で比重を測定します。
    4. 比重が低ければ人工海水の素を少量追い足し、高ければ淡水を少量足して微調整します。
    5. エアレーションしながら1時間程度なじませ、濁りや未溶解がないか確認します。

塩水(食塩のみ)を使わない理由と水道水の処理方法

– 食塩水を避ける理由: 人工海水にはマグネシウムやカルシウムなどの微量元素が含まれ、甲殻類の浸透圧調整や脱皮に寄与します。食塩のみではこれらが不足し、長期飼育に不利とされています。

– 水道水の処理: 水道水は残留塩素が生体に影響するため、必ずカルキ抜き剤で中和するか、十分な汲み置きで除去した水を使います。

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水槽の選び方とレイアウト:底砂・隠れ家を整える方法

水槽のサイズ目安とフタの必要性

  • 目安: 甲羅幅2〜3cmの小型カニ1匹なら、横幅30cmクラスから始めやすいでしょう。水量が多いほど水質が安定します。
  • フタ: カニは上手に登り脱走します。すき間の少ないフタは必須で、コード類の穴もスポンジ等で塞ぎます。

底砂の種類と敷き方・掃除のしやすさ

  • 種類: 細かめのサンゴ砂やアラゴナイト系はpH緩衝に寄与し、清掃もしやすい傾向です。
  • 敷き方: 1〜2cm程度の薄敷きにすると掃除が楽です。底面にデトリタスが溜まる前にプロホースで吸い出します。

流木や貝殻で作る隠れ家の工夫

  • 脱皮や縄張り回避のため複数の隠れ場を作ります。流木・岩・貝殻・市販シェルターを組み合わせ、視線が遮られるレイアウトにします。
  • 水族館の取り組みでも、カニの縄張りと隠れ家の重要性が触れられています。

水温管理の実務:5〜28℃を保つ方法と季節ごとの対策

カニごとの適正温度の目安と測定方法

  • 多くの沿岸性の小型カニは5〜28℃の範囲で活動できますが、安定した中間域(18〜25℃)に収めると体調が安定しやすいと言われます。
  • デジタル水温計を常設し、朝夕での変動幅を把握します。半陸生は陸場の温度と湿度も確認します。

ヒーター・クーラー・設置場所による温度管理

  • 冬: 小型水槽用ヒーターで20〜24℃を目安に加温します。
  • 夏: 冷却ファンや小型クーラー、直射日光を避けた設置、保冷剤の活用で過昇温を防ぎます。
  • 設置: 窓辺や家電の熱風付近は避け、通気性のよい場所に置きます。

低温での休眠(冬眠)リスクと対応

  • 低温で活動が鈍り餌が進まなくなる場合があります。無理な加温より、徐々に温度を上げ安定させる方が負担が少ないでしょう。
  • 脱皮前後は温度変動を避け、静かな環境を整えます。

海のカニ飼育でよくある疑問と簡単な回答

水道水使用や底砂、複数飼育などのQ&A

Q: 海のカニに水道水は使えますか?
A: そのままは残留塩素の影響があるため、人工海水作成時は必ずカルキ抜きをしてください。
Q: カニの水槽に底砂は必要ですか?
A: 種類にもよりますが、細かめの底砂を薄く敷くと落ち着きやすく、摂餌行動も自然に見られます。
Q: 複数匹を一緒に飼えますか?
A: 縄張りや共食いのリスクが高いため、原則は単独飼育がおすすめです。どうしても同居なら広い水槽と多数の隠れ家を用意します。
Q: カニの餌は何がいいですか?
A: 甲殻類用ペレット、乾燥エビ、貝片肉、海藻系フードをローテし、少量を与えます。

すぐ実践できるトラブル対処の短い手順

  1. 水が濁った場合は残餌を除去し、同温同比重の人工海水で30%前後を部分換水します。
  2. 脱走しそうな場合はフタと配線のすき間を塞ぎ、レイアウトを見直します。
  3. 動きが鈍い場合は水温・比重・アンモニアを測定し、異常があれば段階的に是正します。

単独飼育を基本とする理由と同居させるときの対策

縄張り行動の観察例と攻撃性のサイン

  • はさみを高く掲げる、追い回す、脱皮直後個体を狙うなどは攻撃性のサインです。
  • 給餌時の接触で争いが起きやすく、特に夜間にトラブルが増えます。

同居させる場合の隔離・観察ルール

  • 初期は仕切りや育成ケースで様子見し、隠れ家を個体数+2以上設置します。
  • 給餌は分散し、争う個体は即時隔離します。脱皮直後は必ず隔離して回復を待ちます。

繁殖目的の管理(繁殖期の扱い)

  • 繁殖は難易度が高く、ゾエア幼生期に海水条件と餌がシビアになります。経験者向けと考え、まずは単独長期飼育を安定させるとよいでしょう。

水質チェックと水換えの頻度:日常メンテナンスの具体手順

毎日・週次で確認すべき水質指標と測り方

  • 毎日: 水温、比重、外観(濁り・匂い・呼吸数)を確認します。
  • 週次: アンモニア/亜硝酸/硝酸塩、pH(海水は概ね7.8〜8.3)を試薬で測定します。
  • 海のカニは残餌や排泄で水を汚しやすく、こまめな管理が有効です。

部分換水の目安(頻度と交換割合)

目安は週1回10〜30%。水量が少ない・餌が多い場合は回数を増やします。換水は必ず同温・同比重の人工海水で行い、急変を避けます。

ろ過装置とバクテリア管理で換水を減らすコツ

  • スポンジフィルターや外掛け・小型外部を組み合わせ、生物ろ過を育てます。
  • フィルター洗浄は飼育水で軽くすすぐ程度にし、バクテリアを残します。
  • 砂の過度なかき混ぜはアンモニア急上昇の原因になるため注意します。

餌の種類と与え方:栄養バランスと与える頻度の目安

市販餌と天然餌の比較(利点・欠点)

  • 市販ペレット: 栄養が安定し水汚れも抑えやすいが、与えすぎに注意。
  • 乾燥エビ・クリル: 嗜好性が高い反面、残ると汚れやすい。
  • 新鮮な貝・魚片・海藻: 栄養価は高いが腐敗が早く、短時間で回収が必要です。

1日の給餌回数と1回の量の目安

1日1回、カニが3〜5分で食べ切る量から始め、体調と残餌で微調整します。脱皮前後や低温期は少なめにし、無理に食べさせないことが大切です。

残餌管理と餌による水質悪化を防ぐ方法

  • ピンセットでスポット給餌し、食べ残しは10分を目安に回収します。
  • 底砂薄敷きとプロホース吸い出しで残渣をためないようにします。

海で採ったカニの安全な持ち帰り方と到着後の初期対応

採取時の扱い方と捕獲時の注意

  • はさみで挟まれないようトングを使い、甲羅を優しく支えます。
  • 不要な個体はすぐに元の場所へ戻し、採りすぎを避けます。

移送時の容器・湿度・温度管理の方法

  • 海生は清潔な海水入りのフタ付き容器で、半陸生は湿ったペーパーと浅い水場で窒息を防ぎます。
  • 直射日光を避け、保冷バッグと保冷剤で温度上昇を抑えます。

帰宅後の隔離観察と最初の水合わせ手順

  1. 薄い人工海水を準備し、採取海水と温度を合わせます。
  2. 温度合わせ後、点滴法で30〜60分かけて人工海水へ移行します。
  3. 1〜2週間は隔離ケースで観察し、寄生・不調・脱皮サイクルを確認します。
  4. 問題がなければ本水槽へ移し、単独飼育と隠れ家を確保します。

まとめ

海のカニの飼い方は「人工海水の準備」「安定した水温・水質」「単独飼育と隠れ家」「こまめな残餌管理」が柱です。人工海水を使い、比重1.022〜1.026前後を保ち、週次の水質チェックと部分換水でコンディションを維持しましょう。脱走・共食い対策としてフタとレイアウトを工夫し、まずは1匹から丁寧に飼い始めるのがおすすめです。現地の法律・マナーを守り、無理のない範囲で観察を楽しんでください。

— 筆者メモ(経験より): 初期トラブルの8割は水温と残餌が原因でした。特に夏場の過昇温と、見えない隙間からの脱走には細心の注意を払うと良いでしょう。

参考